内科クリニックの医業承継のポイントと事例
当サイトは株式会社SAコーポレーションをスポンサーとしてZenken株式会社が運営しています。
この記事でわかること
- 内科クリニック承継の特徴と成功のための条件
- 高齢患者の信頼関係を維持するための引き継ぎ方法
- スタッフの雇用継続・運営体制をスムーズに保つ工夫
- 属人化した業務や「暗黙知」のマニュアル化の重要性
内科承継の特徴
地域密着ゆえの“安心材料”の
引き継ぎ
地域の「かかりつけ機能」が大きな強み
内科クリニックの大きな強みは、地域に根ざした「かかりつけ医」としての役割にあります。大病院とは異なり、患者の日常や生活環境までを把握した診療は信頼関係の土台といえます。
特に高齢者の多い地域では、通院のしやすさや顔の見える関係性が安心感を生み、長年の付き合いを重ねてきた医師との信頼関係は、クリニックにとってかけがえのない資産です。この「患者とのつながり」は、承継にあたっても高く評価されるポイントになります。
院長の属人性は弱みではなく価値
一見すると属人性の高さは承継の障壁に思われがちですが、裏を返せば院長への信頼が厚い証拠でもあります。後継者が患者との距離感や診療スタイルの共有に時間をかけることで、その信頼をスムーズに引き継ぐことができるでしょう。
段階的な引き継ぎやスタッフによる橋渡しなど、丁寧なステップを踏むことで「人がついているクリニック」ならではの価値を維持できます。
安心材料=顔の見える診療体制
院長だけではなく、看護師や受付スタッフなど、長年同じスタッフが働いていることも内科クリニックの大きな魅力です。患者が顔を見て安心できる体制は、診療そのものの満足度にもつながります。
こうした「人による支え」があるからこそ、承継後も患者が離れにくく、診療の継続性が保たれやすくなります。スタッフの雇用継続を前提に進めることで、承継の成功確率も高まるでしょう。
高齢患者層の信頼と
継続性の担保
高齢患者が離れる理由と対策
「長年診てもらっていた先生が辞めるなら、もう行かなくていい」、高齢患者からはそんな声が聞かれることもあります。その理由はシンプルで、それは「変化」に対する不安です。医師の交代は、診療の質や対応が変わるのではないかという懸念を抱かせます。
こうした不安を防ぐには、「新しい先生も丁寧に診察してくれる」「診療体制はこれまでと変わらない」といった点を、言葉だけではなく行動でも示すことが大切です。丁寧な説明と穏やかな引き継ぎが、信頼関係を維持するカギになります。
スムーズな院長交代の進め方
後継者をスムーズに受け入れてもらうには、段階的な交代が効果的です。一定期間、前院長が診療や経営に関与しながら後継者を紹介していくことで、患者にとっても「いつの間にか新しい先生に変わっていた」という自然な移行が実現します。
もちろん、医師間で診療情報をしっかり共有することも、患者からの信頼感を醸成する手段として欠かせません。このほか、引き継ぎ期間におけるさまざまな工夫が、患者の離脱を防ぐ大きなポイントになります。
患者説明のタイミングと方法
高齢層の患者に対しては、「わかりやすく、何度でも説明する」姿勢が重要です。まずはスタッフと告知内容を共有し、受付時や診察時の対話を通じて自然に情報を伝えていく工夫が求められます。また、掲示や書面など視覚的な情報も活用しながら、それを丁寧に繰り返すことで患者の不安を軽減できます。
できれば、前院長から直接伝える機会を設けるのが理想です。そこで「新しい先生もしっかり診てくれます」とひと言添えることで、信頼のバトンが受け渡されるのではないでしょうか。
看護師・事務との関係性と
運用マニュアル化の
重要性
属人的な業務を洗い出す
内科クリニックの運営には、当然ながら診療以外にも多くの業務が存在します。たとえば、受付での患者対応やカルテ管理、関係機関との連携、調剤薬局とのやり取りなど、実際には院長以外のスタッフが担っている役割が非常に多いのです。
こうした業務を、「誰がどのように対応しているか」可視化することで、属人化している部分とチームで分担できる部分を整理できます。これは後継者が運営状況を把握するためにも必要なステップであり、承継準備の基本ともいえます。
スタッフの安心感が患者に伝わる
院長が交代する際、患者は「クリニックの雰囲気が変わってしまうのでは?」といった不安を感じます。そんなとき、長年勤めている看護師や受付スタッフが変わらずに対応してくれることは、患者にとって大きな安心材料になります。
何よりスタッフ自身が承継に納得し、安心して働いていける状況であれば、その雰囲気は自然と患者にも伝わります。スタッフとの信頼関係づくりは、承継後の患者離脱を防ぐための要なのです。
「暗黙知」をマニュアルに変える
「○○さんは血圧測定前に深呼吸を促すと落ち着く」「〇曜日の訪問診療は○○地区から回る」など、日々の診療にはマニュアル化されていない「暗黙知」が数多く存在します。
特に内科のような患者との関係が深いクリニックにとって、こうした「暗黙知」は継続性を担保する重要な情報です。それらを可能な限りマニュアル化しておくことで、後継者や新しいスタッフが引き継ぎやすくなり、安定したクリニックの運営が保たれます。
承継後トラブルを防ぐ
ポイント
患者トラブルを防ぐ
承継時により避けたいのが患者とのトラブルです。特に多く見られるのは、「知らないうちに先生が変わっていた」「前と診療内容が違う」など、説明不足によって患者が不信感を抱いてしまうケースです。
こうした状況を防ぐには、事前に丁寧な説明を行ない、継続される点と変更される点を明確に伝えることが重要です。告知は掲示やスタッフからの口頭説明だけではなく、診察時の対話の中で繰り返し伝えていくのが効果的です。患者一人ひとりが納得できる形で説明を受ければ、誤解や離脱は最小限に抑えられるはずです。
スタッフの離職を防ぐ
スタッフの離職は、クリニックの雰囲気や業務の安定性に直結する問題です。特に承継直後は、将来への不安や新院長への不信感が離職の引き金になることもあります。
離職を防ぐには、まず雇用条件や役割の継続について明文化し、誠実に伝えることが不可欠です。また、後継者との面談や説明会を通じて、診療方針や今後の体制について直接話す機会も設けることも大切です。安心感と納得感を得られれば、スタッフからの信頼を維持できるでしょう。
地域との信頼を守る
内科クリニックは、患者だけではなく地域とのつながりの中で成り立っています。地域包括支援センターやケアマネージャー、訪問看護などとの連携が日常業務の一部になっているケースも多く、承継時にネットワークが途切れると地域医療におけるクリニックへの信頼が揺らぎかねません。
後継者の就任時には、こうした関係機関にあらかじめ引き継ぎの説明を行ない、可能であれば前院長が同行して紹介するのが理想です。関係性の継続は、地域医療の安定と信頼維持に欠かせない要素です。
内科における
第三者承継の成功例
地方都市でも高い年商実績が評価された例
(北海道)

内科医師
28年間、地域住民に愛されてきた内科クリニックの72歳の理事長が心疾患を患い、体調面での不安と「今後は夫婦での時間を大切にしたい」という思いから、勇退を決意。
地方都市のため、買い手が見つかるのか不安。
「体調面に余裕のあるうちにリタイアして、夫婦で旅行などを楽しみたい」という希望があり、引継ぎ期間を設けないで承継したい。
クリニックを運営する医療法人は無借金経営・高収益であったことから、出資持分と退職金のバランス設計が税務面の最適化に直結するため、専門的スキームの構築が必要。
承継先は、公立病院の内科医として働く医師。
地方都市にありながらも年商2億円という実績に魅力を感じてもらえた。また、理事長の診療に対する姿勢や、築き上げてきたものの価値を高く評価。高額な譲渡価格で成約となった。
事業拡大を計画している候補先と
マッチングした例(中部圏)

内科医師
約20年続く、住宅街の小規模な内科クリニックは10年ほど前から業績が落ち込んでいた。 業績不振の原因は、「増患施策をしていないこと」と「周囲に競合クリニックが増えたこと」。 今後を考えた結果、リタイアしてクリニックを売却することに。
収益状況が悪いため、買い手が見つかるかどうかの不安があった。クリニックの不動産は譲渡せずに、賃貸に出し、家賃収入を得る方法を選択。
収益状態が悪いことを自覚しているため、譲渡額を低く設定。その結果、事業拡大を計画している候補先とマッチング。クリニックの建物が広く事業計画を進めるために適していたこと、譲渡額が安いことなどが評価された。
準備を始めるタイミングと
ステップ
「まだ承継は先の話」と思っているうちに、気づけば計画を立てる時間的余裕がなくなっていることもあります。スムーズな移行のためには、以下のような段取りをおすすめします。
- 現状把握:財務状況、スタッフ体制、地域とのつながりなどを整理する
- 仲介依頼・相手探し:専門家の力を借りて後継者を選定する。
このように段階的に準備することで、承継は「守る」行為として形になっていきます。
内科クリニックの医業承継では、地域密着型の「かかりつけ医」として築かれた患者やスタッフとの信頼関係が大きな資産となります。その信頼を維持するには、段階的な交代や丁寧な説明、そして属人化した業務の可視化・マニュアル化が重要です。高齢患者の不安を軽減し、スタッフとの連携や地域ネットワークを継続することで、承継後も安定した診療体制を保つことが可能になります。

SAコーポレーション
12年クリニック運営を経験し、その後M&Aを行った宮﨑医師が、自分自身の経験をもとに、「医師が満足できる、幸せになれる医業承継を実現したい」とSAコーポレーションを設立。
十分な準備期間を経て、クリニックの価値を上げたうえで行うM&Aを提唱し、その情報発信やサポートを行っています。
