クリニックの売却価格はどう決まる?
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この記事でわかること
- 医業M&Aにおけるクリニックの売却価格の算定方法
- 「のれん」や地域との関係性など、数値に表れない評価要素
- 売れやすい医院と売れにくい医院の特徴
- 売却に向けて日頃から取り組むべき改善ポイント
医業M&Aで価格は
どう決まる?
一般的な「医療機関の価値算定」とは
医業M&Aにおける譲渡価格の算定は、一般企業と同様に「利益」「資産」「負債」などの財務的要素を中心に行なわれます。主な評価方法としては、「時価純資産法」「DCF法(将来の利益を現在価値に換算)」「類似企業比較法」などがあり、複数の方法を組み合わせて最終的な譲渡価格を決定するのが一般的です。
こうした数値ベースの算定は、客観的な交渉材料として有効であり、譲渡側と譲受側の間に共通理解を築くための基礎となります。
利益だけじゃない「見えない価値」
医院には、決算書だけでは測れない「見えない価値」も多く存在します。
たとえば、「スタッフの定着率」「患者数の安定性」「地域における評判」などは、運営の継続性や買い手の安心感に直結する重要なポイントです。これらは俗に「のれん」と呼ばれる無形資産にあたり、譲渡価格に影響する加点要素として評価されます。行政や医師会との連携、地域への協力体制なども、継続的な医療の提供においては強みとなります。
こうした目に見えない要素を整理し、資料として提示することは、買い手の理解と納得を得る上でも非常に重要です。
相場感を知る方法
譲渡価格の相場は、「年間営業利益の3~5倍」が目安とされています(※)。
たとえば、年間営業利益が1,000万円の医院であれば、3,000~5,000万円の範囲で譲渡価格が設定される可能性があるということです。これに保有資産や「のれん」が加味され、調整されるケースも多くあります。
売上規模も参考にはなりますが、最終的な評価は利益水準が軸になります。とはいえ実際の相場は診療科目や立地、スタッフ構成、地域医療ニーズなどによって上下するため、専門家による個別の評価が欠かせません。
相場感を的確に把握するには、医業M&Aに精通した仲介会社等に依頼し、複数の評価指標で試算してもらうのが有効です。こうした評価は、買い手との交渉において説得力のある提示資料として活用できます。
主な評価指標(収益・場所・スタッフ・理念 etc)
収益性:直近の利益や安定性
譲渡価格の算定において、まず重視されるのは「直近の営業利益」や「売り上げの安定性」です。ただし、黒字経営であることが必須条件ではありません。赤字であっても、原因が一時的な理由であることが明らかであれば、ポテンシャルを評価されて買い手が見つかるケースもあります。
また、売上や利益が横ばいでも、患者数や診療単価、季節変動の傾向などが明確であれば運営の見通しが立てやすく、譲渡価格に好影響を与える可能性があります。
立地・地域特性
最寄り駅からの距離や駐車場の有無、競合先の存在の有無などの「立地条件」も、買い手にとっては非常に重要な評価軸です。
人口が増加しているエリアや住宅地に隣接しているエリアは、将来的な患者数の維持・拡大が期待できます。逆に、過疎化が進む地域やアクセスが悪い立地では、買い手の選定が難航しがちです。ただし、そのようなエリアでも行政や医師会との連携実績などがあれば、評価が高まる場合もあります。
スタッフ構成と組織の安定度
医業承継においては、「スタッフの質と定着率」が譲渡価格に大きく影響します。受付スタッフや看護師が長年勤務しており、診療体制を熟知していれば、買い手は安心して引き継ぎを進められます。
逆に、離職率が高くスタッフの入れ替わりが激しい場合、業務の混乱や患者離れのリスクが高いと判断され、マイナス要因となり得ます。組織としての安定感は事業継続性の象徴と見なされるため、譲渡前にチーム体制を整えておくことが望ましいといえます。
診療科目・理念・地域とのつながり
診療科目の特性や院長が掲げる理念、地域との関係性も、評価に影響する重要な要素です。たとえば、小児科や皮膚科といった地域住民の生活に密着した診療科はニーズが継続しやすく、買い手にも魅力的に映ります。
また、院長が「地域医療への貢献」や「在宅医療の充実」といった理念を持ち、それが患者やスタッフにも浸透している場合、その組織風土が価値とされることもあります。他院との差別化のポイントとして、こうした理念や関係性が承継の決め手になることさえあるのです。
「売れる医院」と
「売れにくい医院」の差
売却が決まりやすい医院の特徴
医業M&Aにおいて買い手の関心を引きやすい医院には、いくつかの共通点があります。
第一に、「患者数が安定している」ことです。継続的な来院が見込める医院は、収益の見通しが立てやすく、リスクが低いと判断されます。そして「スタッフが定着している」ことも大きな評価ポイントです。長年勤めているスタッフがいれば、診療の質や患者対応の継続性が担保され、買い手も引き継ぎ後の運営に安心感を持てます。
また、「収益構造がシンプルでわかりやすい」医院も好まれます。複雑な診療科の掛け持ちや、収益の波が大きい診療スタイルは敬遠されやすく、定型的な構造の医院ほど評価が安定しやすい傾向があります。
売れにくくなる要因
売却が難航しやすいケースにも、いくつかの典型的な要因が見られます。その最たるものが「過度な赤字経営」です。長期的に改善の兆しが見えない赤字は、買い手にとって大きなリスクです。また、「経営データが整理されていない」ことも大きなマイナス要因です。売上や原価、利益といった基本的な数値が不明確だと、買い手は判断材料を欠き、交渉も進まなくなります。
「診療内容が特殊すぎる」場合も、後継者が見つかりにくくなります。特に院長の技術や関係性に強く依存している場合、継続運営が困難と見なされる場合があります。
これからできる改善ポイント
スムーズな売却を目指すには、そのポイントを日々の経営の中で少しずつ整えていくことが大切です。たとえば、月次の売上や原価を整理して「見える化」し、収益構造を把握するのは基本中の基本といえます。
また、利益率の改善や稼働率の標準化といった取り組みも評価されます。スタッフの教育や定着支援、業務マニュアルの整備なども、承継後の安定運営に直結する要素だと判断されるでしょう。
クリニックの売却価格は、利益や資産といった財務指標だけでなく、スタッフの定着率や地域との信頼関係などの「見えない価値」にも大きく左右されます。売却成功の鍵は、数値の整理と医院の魅力を伝える準備にあります。買い手に選ばれる医院を目指して、日々の経営改善と情報の「見える化」を進めていくことが重要です。

SAコーポレーション
12年クリニック運営を経験し、その後M&Aを行った宮﨑医師が、自分自身の経験をもとに、「医師が満足できる、幸せになれる医業承継を実現したい」とSAコーポレーションを設立。
十分な準備期間を経て、クリニックの価値を上げたうえで行うM&Aを提唱し、その情報発信やサポートを行っています。
