クリニック売却価格の計算式・相場
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この記事でわかること
- 医業M&Aにおけるクリニックの売却価格の算定方法
- 「のれん」や地域との関係性など、数値に表れない評価要素
- 売れやすい医院と売れにくい医院の特徴
- 売却に向けて日頃から取り組むべき改善ポイント
クリニック売却価格の相場と決まり方
基本の計算式:時価純資産 + 営業権(のれん)
クリニックの売却価格は、「時価純資産」と「営業権(のれん)」を合計して算出されることが一般的となっています。
時価純資産とは、帳簿上の資産を現在の価値で再評価したものです。例えば年数が経過した医療機器は中古相場で、土地や建物は不動産鑑定に基づいた時価で評価を行います。また、営業権(のれん)とは、そのクリニックがこれまでに積み重ねてきた信頼やブランド力、収益力など、目に見えない「無形の資産」をいいます。
上記から、クリニックの売却価格は「目に見える資産(純資産)」と、「目に見えない価値(営業権)」を合算したものとなっています。
なぜ「利益の2〜5年分」が営業権の目安なのか
営業権(のれん代)は、そのクリニックが将来生み出すことが期待される「超過収益力」です。一般的に「利益の2〜5年」とされることが多くなっていますが、経営の安定性や院長への依存度によって異なってきます。通常は1〜3年とされていますが、優良案件の場合は「3〜5年」とされることもあります。
利益だけではない「見えない価値」
数字上の利益のほかにも、買い手が「リスク軽減」として高く評価するポイントがあります。例えばベテランの看護師や事務員がいるなど「スタッフの定着率」が挙げられます。定着率が高ければ、承継後の採用コスト・教育にかかるリスクを大幅に下げることが可能です。また地域住民からの信頼が厚く、承継後に患者が離れない(=レピュテーションリスクが低い)という点も高く評価される部分といえます。
このように、買い手は目に見える部分だけではなく、「見えない価値」についても評価を行います。
個人クリニックと医療法人での評価の違い
個人クリニックと医療法人でも評価の対象が異なってきます。
個人クリニックで売却を行う場合には、「事業譲渡」の形式となり、評価の対象は設備と営業権が中心となります。一方、医療法人の場合は「出資持分譲渡」の形式となり、内部保留(現預金)や負債まで含めた、法人格丸ごとに対する評価が行われるといった違いがあります。
査定価格を左右する「5つの評価ポイント」
立地条件と診療圏調査(将来性の評価)
不動産価値のみではなく、立地条件や診療圏調査(将来性の評価)なども評価指標のひとつです。
例えば駅からの距離や駐車場の有無といった利便性に加えて、診療圏内の人口動態や競合他院の状況がポイントになってきます。今は黒字経営を続けていられたとしても、例えば至近距離に最新の設備を持つ大型クリニックが参入予定の場合には将来価値が下がってしまいます。逆に、再開発が進められているエリアや、競合が少ない立地なら長期的な収益が期待できる、という判断になります。
建物・医療機器の法定耐用年数とメンテナンス状態
建物や医療機器の法定耐用年数とメンテナンスの状態も評価に関わります。
設備に関しては、法定耐用年数が過ぎていたとしても、実用性が高く十分にメンテナンスが行われている機器であれば評価にプラスされる可能性が考えられます。特にCTやMRIなどの高額機器の場合には、保守の状況などがチェックされます。また、リース契約の残り期間についても評価に関連してきます。
スタッフの質と定着率(有資格者の有無)
医療業界は人手不足が深刻となっていることからも、スタッフそのものが大きな資産であるといえます。中でも指導医や認定医の資格を持つ医師、ベテランの看護師、レセプト業務に精通した事務員の有無は、そのクリニックの価格を大きく左右することになります。
これは良い人材が確保できれば、買い手にとって採用コストと教育の手間を省くことができ大きな価値に相当するためです。逆に、離職率が高く求人募集を出し続けている場合には、経営上の不安要素とみなされ査定額が下がる要因となります。
患者数と自費率(リピート率と収益性)
患者数や自費率も評価の対象となっています。この点については、1日の平均患者数だけではなくレセプト枚数についても見られます。また自費診療の割合が高いクリニックについては、診療報酬改定の影響を受けにくく利益率も高いことから、高く評価される傾向があるといえます。ただ承継後の再現性が低いと判断された場合には、期待したほど価格がつかないケースも考えられます。
帳簿上の利益だけでは分からない「修正利益」の算出
クリニックの事業価値を評価することを一般的に「バリュエーション(価値算定)」と呼びますが、ここでは決算書を「実際の収益力」に引き戻すための修正利益の算出が必要となります。具体的には、役員報酬の適正化や個人的経費の除外、借入金利息の足し戻しなどを行います。これらの調整によって、経営者が変わった際にどれだけの利益が残るのかを算出しますが、これが営業権の根拠となります。
「売れる医院」と
「売れにくい医院」の差
売却が決まりやすい医院の特徴
医業M&Aにおいて買い手の関心を引きやすい医院には、いくつかの共通点があります。
第一に、「患者数が安定している」ことです。継続的な来院が見込める医院は、収益の見通しが立てやすく、リスクが低いと判断されます。そして「スタッフが定着している」ことも大きな評価ポイントです。長年勤めているスタッフがいれば、診療の質や患者対応の継続性が担保され、買い手も引き継ぎ後の運営に安心感を持てます。
また、「収益構造がシンプルでわかりやすい」医院も好まれます。複雑な診療科の掛け持ちや、収益の波が大きい診療スタイルは敬遠されやすく、定型的な構造の医院ほど評価が安定しやすい傾向があります。
売れにくくなる要因
売却が難航しやすいケースにも、いくつかの典型的な要因が見られます。その最たるものが「過度な赤字経営」です。長期的に改善の兆しが見えない赤字は、買い手にとって大きなリスクです。また、「経営データが整理されていない」ことも大きなマイナス要因です。売上や原価、利益といった基本的な数値が不明確だと、買い手は判断材料を欠き、交渉も進まなくなります。
「診療内容が特殊すぎる」場合も、後継者が見つかりにくくなります。特に院長の技術や関係性に強く依存している場合、継続運営が困難と見なされる場合があります。
これからできる改善ポイント
スムーズな売却を目指すには、そのポイントを日々の経営の中で少しずつ整えていくことが大切です。たとえば、月次の売上や原価を整理して「見える化」し、収益構造を把握するのは基本中の基本といえます。
また、利益率の改善や稼働率の標準化といった取り組みも評価されます。スタッフの教育や定着支援、業務マニュアルの整備なども、承継後の安定運営に直結する要素だと判断されるでしょう。
ケース別:売却価格の事例と傾向
【赤字経営】でも価格がつくケース、つかないケース
例え赤字経営の状態だったとしても、土地や建物に相応の資産価値がある場合や、買い手がその地域への進出(ドミナント戦略)を検討している場合などには価格がつきます。また、役員報酬や不要な経費の削減といったように、固定費の削減を行うことで黒字かが容易と判断されるケースについても、同様に価格がつくと考えられます。
ただし、医師不足や立地の悪化などにより改善の余地がないと判断された場合には、価格がつかずむしろ閉院コストを抑えるための「0円譲渡」となるケースもあります。
【診療科別】営業権が高く評価されやすい科目の特徴
例えば内科や透析科の場合には、慢性疾患により通院している患者が多いことから、承継後の収益に関する予測が容易であるといえます。この場合には、営業権の年数が長くなる傾向があります。また、美容外科や歯科など自由診療が中心となる科目については、マーケティング力や設備投資の状況によって、評価が大きく分かれる傾向が見られます。
【地方・過疎地】のクリニック売却の現実と対策
地方のクリニックの場合、買い手探しに時間がかかりやすいものの、近隣に競合がいない地域独占の状態であれば、安定して患者が通院する、という点で評価される可能性も考えられます。このような場合、地域医療を守るといった社会的な意義を全面に出すことによって成約に至るケースもあります。
売却価格(手残り)を最大化させる「イグジット経営」の秘訣
売却の3年前から始める「経営の磨き上げ」とは
売却の3年前から、不採算部門の整理やコストの削減を行うことによって、営業権の元となる利益を最大化する戦略が重要となってきます。また就業規則の整備や権利関係の整理を行い、デューデリジェンスにおける減額要因の排除を行います。このような対策により、高値での成約に繋げていきます。
税金対策(譲渡所得税)と退職金の活用で残る現金を増やす
医療法人のM&Aにおいては、持分譲渡による譲渡益は所得として課税されることになりますが、税を軽くするために対価の一部を退職金として支払う方法が一般的に用いられています。さらに、退職金の支払いは損金として算入が可能であるため、買い手側にもメリットがある方法であるといえます。
仲介会社の選び方:成約価格だけでなく「安心」を重視
M&Aを進める場合には仲介会社の選択が必要となります。この時、高い査定額を出すのみの会社には注意が必要です。重要なのは、実数に基づいた適正価格の提示を行い、成約まで伴走してくれるかどうかです。医療法や行政手続に精通していることはもちろん、医師の心理に寄り添ってくれない会社の場合、途中で交渉が決裂する、承継後にトラブルが発生するなどの可能性も考えられるため、仲介会社選びは慎重に行うことが大切です。
クリニック売却価格に関するよくある質問
内装が古くても営業権はつきますか?
内装が古くても営業権はつく可能性があります。例え建物や内装が古かったとしても、集客力(患者基盤)があれば営業権は十分に発生するため、見た目の古さで諦める必要はないといえます。
従業員に秘密で査定を依頼できますか?
M&Aを行う場合には、成約直前までその情報は秘密にすることが鉄則といえますので、査定は可能です。初期査定は決算書などの書類のみで行われますし、候補者とのマッチングも匿名情報(ノンネーム)で行われます。そのため、スタッフや患者に不安を与えずに進められます。
相談から成約まで、価格が決まるまでの期間は?
全体の期間としては、概ね半年から1年程度が目安となります。その内訳としては、準備に1〜2ヶ月、マッチングに3〜6ヶ月程度必要となります。M&Aは買い手探しなども必要となるため、余裕を持って動き出すことが理想といえます。
クリニックの売却価格は、利益や資産といった財務指標だけでなく、スタッフの定着率や地域との信頼関係などの「見えない価値」にも大きく左右されます。売却成功の鍵は、数値の整理と医院の魅力を伝える準備にあります。買い手に選ばれる医院を目指して、日々の経営改善と情報の「見える化」を進めていくことが重要です。

SAコーポレーション
12年クリニック運営を経験し、その後M&Aを行った宮﨑医師が、自分自身の経験をもとに、「医師が満足できる、幸せになれる医業承継を実現したい」とSAコーポレーションを設立。
十分な準備期間を経て、クリニックの価値を上げたうえで行うM&Aを提唱し、その情報発信やサポートを行っています。


