「子どもが継がない」とわかったら最初に読むページ
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この記事でわかること
- 子どもが継がない開業医の現状とその背景
- 第三者承継という選択肢の意味と進め方
- 廃業との違いや、理念を残す承継の工夫
- 今から始められる承継準備のステップ
子どもが継がないのは
“よくある”こと
開業医の親族承継が減っている理由
医業承継にはさまざまなきっかけがありますが、「子どもが継がない」という理由は今ではまったく珍しくありません。その背景には、子ども世代のキャリア観や生き方の変化があります。
まず、医師免許を持っていても「勤務医として専門性を追求したい」「都市部でキャリアを築きたい」と考える若手医師が増えています。そこには、開業医の多忙さや経営責任の重さ、地域医療の担い手としてのプレッシャーを避けたいという心理も影響しているかもしれません。
親が築いてきた地域密着型の働き方が、必ずしも子どもにとって魅力的とは限らない時代になっているのです。
「継がせないといけない」という
思い込み
ベテランとされる世代の開業医には、「医院は子どもが引き継ぐもの」という考え方が根強く残っています。しかし、それは一世代前の常識であり、現在は地域事情や医療経済の動向、家族構成など、さまざまな背景によって継がない選択をするケースが増えています。
「継がせるのが当然」という思い込みがあると、話し合いの場でもお互いが本音を出せず、すれ違いが起こりがちです。大切なのは、「継がない」ことを子どものわがままではなく、時代に即した自然な判断として受け入れる視点です。
「自分だけじゃない」と思えるデータ
帝国データバンクの「全国後継者不在率動向調査(2024年)」(※)によると、全国の企業のうち52.1%が後継者不在と回答しました。医療機関でも同様の傾向が見られ、親族による承継は減少の一途を辿っています。
一方で、第三者承継を選ぶ医療機関は着実に増えており、M&Aを活用した医業承継は特別な方法ではなくなりつつあります。こうした社会的な流れを知ることが、不安の軽減や次のステップへの意欲につながることもあるのです。
それでも「地域」「患者」「理念」を残す
選択はある
第三者承継とは?
子どもが継がないなら「クリニックをたたむしかない」と考える方も少なくありません。そこで近年注目されているのが「第三者承継」という方法です。
第三者承継は、親族ではない外部の医師や医療法人にクリニックを譲渡する方法で、M&Aの形で実行されます。専門の仲介業者が間に入り、譲渡側の希望や条件に合った後継者を探し、引き継ぎの交渉や契約、実際の引き継ぎ支援までを一貫してサポートします。診療が止まることなく継続できるという点で、今や多くの医療機関にとって現実的な選択肢となっています。
「廃業」との違い
廃業とは、クリニックを完全に閉じて医療の提供を終了することを意味します。その際は、患者への診療終了の通知やスタッフの退職手続き、設備の撤去など大きな作業負担を伴います。さらに地域医療の損失にもつながってしまいます。
一方、第三者承継であれば診療体制を維持できるので、これまでと変わらず患者が通院できます。スタッフの雇用も守られることが多く、地域医療にとっても大きなメリットです。
「クリニックは自分で終わらせなければならない」という考えにとらわれず、地域と患者のために続けるという道を選択できるのが、第三者承継の大きな意義です。
理念を引き継ぐにはどうすれば?
承継において大切なのは、「形」だけではなく「思い」も引き継ぐことです。後継者との丁寧な話し合いを通じて、診療方針や患者への向き合い方、自院が大切にしてきた理念を共有しましょう。引き継ぎ期間中に一緒に診療を行ないながら、患者やスタッフに紹介する機会を設けることで、診療スタイルのすり合わせと信頼関係の維持が可能になります。
まったく同じ形にするのは難しくても、思いを受け継いでくれる後継者と出会うことで、クリニックを残すことに意味が生まれます。
実際に第三者承継を選んだ医師のケース
開業から28年の内科医院
院長の思いを叶える
承継を実現

内科医師
開業から28年、北海道の地方都市で地域に根差したクリニックの承継事例です。70代の院長は体調に不安を感じ始め、後継者がいないためM&Aによる承継を決意しました。
このクリニックは地域に密着した優良経営を続けており、売上が2億円を超える高収益を上げていました。しかし、院長はリタイア後元気なうちに海外旅行など人生を楽しみたいという強い希望から、引き継ぎ期間を設けないことを条件としていました。
これは、円滑な承継において一般的な引き継ぎ期間を省くことで、患者離れや運営の混乱につながる可能性があるという課題を抱えていました。
買い手は、地域での開業を希望していた30代の若手医師でした。すでに別の買い手候補との交渉が進んでいる状況でしたが、この若手医師はクリニックへの強い思いから、一般的なM&Aの算定額を超える高額な譲渡対価を提示しました。
この価格提示は、単なる金額の高さだけでなく、若手医師のクリニックに対する熱意とビジョンが伝わり、院長は安心して引き継ぎを任せられると判断しました。その結果、引き継ぎ期間を設けないという条件をクリアし、スピード成約に至りました。
承継後は一時的に患者数が減少したものの、若手医師は電子カルテ導入など、新しい取り組みでクリニックの運営向上に尽力しています。
売り手・買い手、
双方の課題を解決した
承継

消化器外科
売り手である院長は、25年以上にわたり消化器外科のクリニックを経営してきましたが、定年を区切りにしたいと考えました。実子も医師でしたが承継の意思がなかったため、第三者承継に向けて動き出しました。
譲渡条件は、「診療を継続してもらうこと」「現在の職員の雇用をそのまま維持してもらうこと」の2つでしたが、1年経っても良い買い手が見つからない状況でした。
一方、買い手の40代の医師は、自宅から通える範囲で開業を希望していましたが、1年間良い案件に巡り会えずにいました。仲介担当者との面談でビジョンを深掘りした結果、視野が広がり、内視鏡検査の手技を生かせるクリニックを探す方向に転換しました。
その結果、条件に合わなかったものの、内視鏡設備が整い、長期的な安定経営が見込めるクリニックの院長と面談で意気投合。特にバックグラウンドが似ていたことで互いに信頼を深めました。
院長は、買い手の医師に熱意と将来性を感じ、当初の希望額よりも低い金額で譲渡を承諾。長年の課題だった譲渡先の発見と、納得のいく相手への承継が実現しました。
いまから準備できること
すぐ廃業準備に走らない
「子どもが継がない」「この先どうすべきか」と考えたとき、真っ先に頭に浮かぶのが廃業という選択肢かもしれません。しかし、感情的に動いてしまう前に、一度立ち止まって状況を整理することが大切です。まずは「廃業以外にどんな選択肢があるのか」という視点で情報を集め、自院の特徴や地域ニーズに合った方向性を検討することが、後悔のない判断につながります。
まずは「資産」「経営状況」を把握する
クリニックを第三者に引き継ぐにしても、引き継がずに廃業するにしても、自院の現状は客観的に知っておくべきです。診療収入の推移やスタッフの雇用状況、設備や不動産などの資産、負債の有無などを整理し、必要に応じて専門家による評価を受けるのも有効です。
自院の価値がわかることで、次のステップがより明確になり、家族との共有や承継交渉時の資料としても役立ちます。
スタッフ・家族と話しておくべきこと
いざ承継や廃業を決めてから慌てて話し合うのではなく、日頃から家族や信頼しているスタッフと意見を交わしておくことが大切です。「何を優先したいか」「どんな未来を望むか」といった軸を共有しておけば、将来の選択も揺れずに進めやすくなります。
医業承継は少なくとも2~3年の準備期間を要するとされており、タイミングを逃すと選択肢が狭まってしまいます。だからこそ、逆算思考で「今できる準備」をひとつずつ積み重ねていくことが、将来の円滑な承継につながっていくのです。
「子どもが継がない」というケースは決して特別ではなく、現代の医療業界では一般的な傾向です。第三者承継という選択肢を取れば、地域医療や理念を守りながらクリニックを未来につなぐことが可能です。感情的に廃業を選ぶ前に、今できる準備として現状把握や家族・スタッフとの対話を始めましょう。逆算思考で動くことで、納得のいく承継が実現できます。

SAコーポレーション
12年クリニック運営を経験し、その後M&Aを行った宮﨑医師が、自分自身の経験をもとに、「医師が満足できる、幸せになれる医業承継を実現したい」とSAコーポレーションを設立。
十分な準備期間を経て、クリニックの価値を上げたうえで行うM&Aを提唱し、その情報発信やサポートを行っています。
