M&Aで“売れる医院”と“売れない医院”の違い
当サイトは株式会社SAコーポレーションをスポンサーとしてZenken株式会社が運営しています。
この記事でわかること
- 医院M&Aにおいて“売れる医院”が持つ3つの特徴
- “売れにくい医院”と見なされる要因と改善ポイント
- 買い手が注目する評価項目(収益、立地、スタッフ体制など)
- 今からできる医院価値向上のための具体的な準備とチェックリスト
“売れる医院”の3つの共通点
1.収益構造が安定している
医業M&Aにおいて買い手が最初に注目するのは、継続して収益が見込めるかどうかです。月ごとの売上に多少の波があっても、赤字を出さずに一定のキャッシュフローを維持できている医院は、経営の再現性があると判断されやすくなります。
特定の診療科や自由診療などで収益が偏っていないか、保険診療の割合や診療報酬の内訳もチェックされるポイントです。基本的には、利益が小さくても安定していること自体が強みになるといえます。
2.スタッフ体制が安定している
買い手にとって、スタッフの定着率は重要な判断材料のひとつです。長く勤務しているスタッフが院内の業務フローを理解し、患者との信頼関係を支えている、そのような体制は大きな強みになります。
逆に離職率が高く、常に人手不足の状態であれば、引き継ぎ後の運営に不安が残るため敬遠されます。安定したチームの存在は、承継後の混乱を最小限に抑え、患者離れも起こりにくくなると評価されます。
3.業務が“見える化”されている
診療や経営が院長個人に依存している状態は、買い手にとってはリスクに映ります。反対に、業務内容が明文化されて第三者でも運営しやすいように「見える化」されている医院は、価値を高く評価されやすい傾向にあります。
診療データや患者台帳の整理、業務フローのマニュアル化など、日々の運営を構造的に把握できる体制が理想です。属人性をカバーする仕組みがあれば、スムーズな承継が可能になります。
“売れにくい医院”は何が
足りない?
属人性が強すぎる
買い手が懸念するマイナス要素のひとつが、診療面、運営面における院長への過度な依存です。
たとえば、院長にしか信頼を寄せていない患者が多いと、承継後に通院をやめてしまうリスクが高くなります。
また、診療スタイルや運営判断が属人的であれば、引き継ぎも困難になりがちです。患者やスタッフとの信頼関係は大切にしながらも、それを後継者に引き継げるような仕組みづくりが求められます。
スタッフが辞めやすい
スタッフが頻繁に入れ替わっていたり、リーダー的な存在の人材が育っていなかったりすると、買い手からは運営が不安定だと見なされます。
特に受付や看護の現場業務を担うスタッフが安定していない場合、承継後のスムーズな診療の継続が難しいと判断されがちです。逆に、長年勤務するベテランスタッフがいれば、継続性の観点から高い評価を受けやすくなります。
経営データが整理されていない
売上や利益などの基本的な経営指標が正確に把握されていなければ、買い手は医院の実力を測ることができません。診療報酬の内訳や科目別の収益、固定費の構成など、数値としての「見える化」がなされていないと、買い手にとっては判断材料に欠けます。
特に医院が赤字傾向にある場合、正確なデータの不在は明らかなマイナス要因です。経営データの整理と提示は、M&Aの入り口における医院の信頼性を高めるためにも欠かせません。
物件・設備の状態が悪い
建物や内装の老朽化や医療機器の未更新、耐用年数の切れた設備なども買い手から敬遠される要素です。修繕費や再投資が必要な場合、その負担を買い手が負うことになれば交渉が難航するかもしれません。
反対に、設備が整っていて、古くても清潔感のある環境が保たれていれば、それだけで「すぐに使える」という安心感につながります。固定資産の定期的なメンテナンスは、承継を視野に入れた重要な準備といえるでしょう。
実際の評価で見られる
ポイント
収益とキャッシュフロー
医業M&Aにおいて重視されるのは、売上の大きさよりも安定した利益率と継続的かつ余裕のあるキャッシュフローです。
患者数が多くても利益が出ていなければ、それは買い手にとっての運営リスクです。毎月の利益が安定していて赤字月がなければ、それは高い「継続可能性」の評価につながります。診療報酬の内訳や経費構造も合わせて、収益の透明性を高めておくことが重要です。
立地と地域性
医院の立地は評価に直結する大きな要素です。医業M&Aにあたっては、駅からの距離や駐車場の有無といったアクセス性に加え、地域の人口動態や競合の有無なども評価に加味されます。
特に注目されるのは、今後も安定して通院が見込める「患者層の将来性」です。高齢化の進行状況、診療圏における診療科のバランス、周辺の再開発情報なども判断材料として挙げられます。
スタッフ雇用・労務リスク
買い手にとっては、スタッフの雇用状況や労務管理の体制も慎重に見極めるべきポイントです。労働条件は適切か、契約内容に問題はないか、そして残業時間や有給休暇取得の状況などもチェックされます。
特に退職金制度や人事評価の運用に不透明さがあると、それがトラブルリスクと見なされることもあります。承継後も安心して雇用を引き継げる環境が整っていることが、医業M&Aにおいて高い評価につながります。
設備・物件の状態
医療機器の状態や耐用年数、修繕履歴、そして物件の賃貸条件なども評価の対象になります。中でもレントゲン装置やCTなどの高額な機器が古すぎると買い手は更新コストを見込む必要が出てくるため、交渉に影響を与える可能性があります。
また、物件の賃貸契約の更新時期や契約条件も重要です。特にオーナーとの関係性や契約期間の長短は慎重にみられる傾向にあります。
今から改善できる
チェックリスト
1.属人性を減らす工夫
院長の細かい指示がなくても業務が回る医院を目指すためには、マニュアルの整備が欠かせません。受付業務や診療の流れ、薬剤の発注など、業務を細分化して可視化することで、スタッフ間の連携もスムーズになります。
また、患者管理のデータ化も重要です。疾患の傾向や通院の頻度、各々の診療方針のメモなどを蓄積しておけば、後任医師が患者情報を迅速に把握できます。
2.スタッフとの関係性を強化
スタッフの離職防止は、医院の価値の維持に直結します。その対策としては、定期的な1on1面談を実施し、日頃の悩みや業務の改善点を吸い上げることが効果的です。
また、給与体系や休暇制度、キャリアアップ支援なども見直し、働きやすい環境を整える工夫が求められます。承継後もスタッフが安心して働き続けられる職場は、買い手にとっても大きな魅力になります。
3.経営データを整える
医業に限ったことではありませんが、M&Aでは収益の構造や安定性を数値で適切に示せるかどうかが重視されます。そのためにも、会計ソフトを活用して収益・費用・利益を整理する習慣をつけておきましょう。
診療報酬の構成や自由診療の割合、経費ごとの内訳なども整理し、過去3年分程度のデータをすぐに提示できるようにしておくと、医院の経営管理に対する信頼性が高まります。数字で示せる経営は、買い手との交渉をスムーズにします。
4.設備や物件の棚卸し
医院が保有している医療機器や設備は、一覧にして耐用年数や修繕履歴を整理しておきましょう。特に大型の設備は、リース契約の有無や費用負担の所在も重要な確認ポイントです。
また、物件が賃貸の場合は契約期間や更新条件も明文化しておくと、交渉の際に話がスムーズに進みます。細かな情報まで整えておくことが、買い手からの信頼を高めるポイントになります。
医院の第三者承継を成功させるには、安定した収益・定着したスタッフ・属人性の排除などが不可欠です。買い手は、再現性のある経営体制と「見える化」された業務フローを重視します。逆に属人性が強く、経営データが未整備な医院は売れにくくなります。今のうちからマニュアル整備やスタッフ支援、経営情報の可視化などを進めることで、医院の承継価値を高めることが可能です。

SAコーポレーション
12年クリニック運営を経験し、その後M&Aを行った宮﨑医師が、自分自身の経験をもとに、「医師が満足できる、幸せになれる医業承継を実現したい」とSAコーポレーションを設立。
十分な準備期間を経て、クリニックの価値を上げたうえで行うM&Aを提唱し、その情報発信やサポートを行っています。
