3年後のM&Aを見据えて準備する
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この記事でわかること
- なぜクリニック承継には“3年”が理想とされるのか
- 各年次(1年目~3年目)にやるべき準備とその目的
- 承継価値を高めるための経営改善・業務改善の具体例
- スタッフ・患者へのスムーズな説明と承継の進め方
イグジット経営の
基本スケジュール
(3年モデル)
なぜ“3年”が理想か
クリニックの承継には、候補探しや条件交渉、引き継ぎなど多くのプロセスがあり、想像以上に時間がかかるものです。「半年で売れる」という事例はほとんどなく、あったとしても条件が下がったり、買い手候補が限られたりするリスクがあります。
3年程度の期間を確保できれば、買い手の選定から契約、移行期間までを計画的かつ余裕を持って進められ、納得のいく形で承継できる可能性が高まります。
3年あればできること
3年程度の期間があれば、買い手を探すだけではなく、経営改善やスタッフ体制の強化、患者との信頼関係を継続する準備まで十分に進められます。
初年度は診療・経営・人事の棚卸しを行ない、課題を明確化。2年目に改善策を実行に移し、3年目は交渉や契約を進めながらスムーズな引き継ぎを行なう、という流れがひとつの理想的パターンです。
余裕のある準備期間は、承継後も地域医療に貢献するための大きなポイントになります。
「後悔しない」ための逆算思考
承継を先延ばしにすると、患者数や収益の減少によって条件が下がるリスクが高まります。
逆算思考でスケジュールを組めば、必要な準備を漏れなく実行でき、希望に沿った条件を維持しやすくなります。3年先を見据えて動き始めることは、買い手探しだけではなく、スタッフや患者に安心感を与える意味でも重要です。早期の着手が後悔しない承継への近道だと心得ましょう。
1~2年目:現状把握と課題の
洗い出しと業務改善・体制整備
経営データを整理する
売上や利益、患者数といった経営指標は、月次で把握できるように整えておくべきです。診療報酬の内訳や自由診療の割合、人件費や外注費の構成まで掘り下げることで、クリニックの収益構造が明確になります。
また、過去数年分のデータが揃っていれば、買い手は経営の安定性を評価しやすくなります。数字に基づいた実績を正確に示せることは、承継交渉を有利に進めるための大きな材料です。
属人性の棚卸し
院長だけに依存している業務や、暗黙知としてスタッフに浸透しているノウハウをリストアップします。
たとえば、特定の患者への対応方針、機器の設定やメンテナンス方法、診療以外の事務処理などが挙げられます。これらを明文化しておけば引き継ぎ時の混乱が防がれ、承継後も医療の質を保ちやすくなります。属人性の可視化は、クリニックの承継価値を高めるための基礎作業といえます。
スタッフ体制と雇用条件の確認
スタッフの勤務年数や役割分担、雇用契約の内容も整理し、離職リスクを見える化する必要があります。長年勤めるスタッフが多ければ人事の安定感として評価されますが、承継後の労働条件や待遇に不満があれば離職につながる可能性もあります。
勤務時間や給与体系、福利厚生などをチェックし、必要に応じて改善策を検討しておくことが承継後の安定運営につながります。
属人性を減らす仕組みづくり
まず、院長が変わっても診療や運営に支障がない体制を整えることが重要です。
受付や診療補助、物品の発注などをマニュアル化し、業務の手順を共有できるようにします。患者台帳や診療データの整理・デジタル化も進めることで、後任医師がスムーズに対応できる環境が整います。こうした仕組みは買い手にとっても安心材料となり、クリニックの評価を高めます。
スタッフとの関係性強化
承継時にスタッフが離職してしまうと、患者対応や運営が不安定になります。面談で意見や不安を吸い上げ、積極的に業務改善へとつなげていきましょう。
役割分担の見直しや分業化による個々の負担の軽減も、働きやすい職場づくりに欠かせません。スタッフが安心して働き続けられる環境は、クリニックの価値を維持する大切な要素です。
経営改善で価値を高める
2年目は、クリニックの価値をさらに引き上げる取り組みも実行していきます。具体的には、不採算部門の見直しや診療フローの効率化によって利益率を改善する、といったプランです。
また、新たな診療メニューの導入や予約システムの見直しなども有効です。このような経営改善・業務改善を進めておけば、それが3年目の交渉時に強い提案材料となり、有利な条件を引き出せる可能性を高めます。
3年目:仲介・マッチング開始
専門家を味方につける
承継を成功させるには、医業M&Aに強い仲介会社やFA(フィナンシャル・アドバイザー)、税理士、社会保険労務士といった専門家のサポートが欠かせません。
医療機関特有の許認可や契約の切り替え、物件や医療機器の引き渡し条件など、医業M&Aには一般企業とは異なるポイントが多く存在します。早い段階で専門家にアプローチし、工程表や資料を共有しておくことで交渉や手続きがスムーズに進みます。その場合は守秘性を保ちつつ、必要な情報を適切に整理しておくことが重要です。
候補探しの流れ
買い手候補の選定から契約までには、複数のステップがあり、一般的には次のような流れになります。
- ティーザー(匿名の事業概要書)配布から秘密保持契約(NDA)の締結
- 資料閲覧
- 意向表明(LOI)
- 基本合意(独占交渉)
- デューデリジェンス(財務・法務・労務・診療データの精査)
- 最終条件調整
- 契約締結
情報漏洩防止のため、候補先とのやり取りは担当窓口を一本化し、回答期限や資料提示のルールも明確にしておくと混乱を避けられます。
スタッフ・患者への説明準備
承継情報の伝達は、タイミングと順序が非常に重要です。
まずはクリニックの運営を支えるリーダークラスに先行して説明し、それからスタッフ全員に、最後に患者への告知へと進めていきます。その際、診療体制や雇用条件がどのように変わるのか、患者にとって何が変わらないのかを明確に示すことで、不安や動揺を最小限に抑えられます。
院内掲示用のお知らせ文やFAQ、患者向け説明文を事前に用意する配慮も求められます。
今日からできる小さな一歩
まずは現状を“見える化”
いきなり本格的な経営改善を進めるよりも、まずは数字を集める習慣を持つことが出発点です。
毎月の売上や患者数を簡単に集計するだけでも、季節変動や診療科ごとの収益バランスなどが見えてくるでしょう。診療報酬の構成や自由診療の割合なども合わせて記録しておくと、クリニックの現状をより正確に把握できます。
こうして蓄積したデータは、買い手候補にクリニックの安定性を示す根拠にもなり、承継交渉を有利に進める材料になります。
属人業務を書き出してみる
「院長だけが知っている業務や判断」は、承継においてマイナス要素になります。
特定の患者への診療方針や医療機器の設定方法、長年の取引先とのやり取りなど、日常の中に多くの属人的業務が潜んでいます。これらを一度すべて書き出すことで、業務の可視化と引き継ぎの優先順位づけが可能になります。その記録を更新しやすい体裁にしておけば、業務改善やマニュアル化もスムーズに進みます。
信頼できる専門家の情報を集める
医業M&Aは財務や契約内容だけではなく、許認可や人事、地域医療との関係性まで幅広くカバーする必要があります。そのため、医療業界に精通しているM&A仲介会社や税理士、社会保険労務士などの専門家を早い段階からピックアップしておくことが大切です。
実際に承継を経験した医師や同業者の事例を調べると、必要な準備や落とし穴も見えてくるでしょう。信頼できるパートナーの存在は、安心感もさることながら、承継成功の確率を大きく高める要因になります。
クリニックの円滑な承継には、少なくとも3年の準備期間が理想です。1年目で現状を可視化し、2年目に改善を進め、3年目に買い手探しと交渉を行うことで、条件や信頼関係に妥協せず進められます。スタッフ体制や業務の属人性の見直し、専門家との連携を早期に始めることで、承継後も地域医療を継続できる体制が整います。逆算思考による計画が、後悔しない承継のカギとなります。

SAコーポレーション
12年クリニック運営を経験し、その後M&Aを行った宮﨑医師が、自分自身の経験をもとに、「医師が満足できる、幸せになれる医業承継を実現したい」とSAコーポレーションを設立。
十分な準備期間を経て、クリニックの価値を上げたうえで行うM&Aを提唱し、その情報発信やサポートを行っています。
