消化器内科クリニックの医業承継のポイントと事例
当サイトは株式会社SAコーポレーションをスポンサーとしてZenken株式会社が運営しています。
この記事でわかること
- 消化器内科クリニックにおける医業承継の特徴と注意点
- 医療機器(内視鏡など)の状態や稼働実績が承継評価に与える影響
- 長期通院患者との信頼関係を可視化・継続するための方法
- スタッフのスキル・対応品質を維持するためのマニュアル化と連携
消化器内科の特徴
「設備×継続診療」で構成
される強み
検査設備が医院価値の一部になる
消化器内科クリニックにおいて、内視鏡装置や超音波検査装置などの医療機器は診療の中核を担います。
特に内視鏡装置は、高額な医療機器であると同時に「クリニックの競争力」そのものです。承継にあたっては、単に設備があるかどうかではなく、稼働状況やメンテナンス履歴が大きな判断材料になります。
日常的に使用され、丁寧に管理されてきた医療機器は、後継者にとっても安心材料のひとつです。クリニックの資産として正当に評価されるでしょう。
慢性疾患フォローが生むリピート性
消化器内科は、短期間の治療で完結するケースよりも慢性的な疾患管理が多くなる診療科です。
たとえば、ピロリ菌除菌後の経過観察、肝機能障害、逆流性食道炎などで通院を継続する患者が多く、安定したリピート率がクリニックの収益を支えています。
定期的な検査やフォローアップが定着しているクリニックほど、長期的に患者との信頼関係が築かれており、それが承継時にも継続されやすいという強みがあります。
「設備×信頼関係」の両方を活かす
前述のとおり、医療機器と同時に重視されるのが「患者との関係性」です。
特に地域に根ざしたクリニックでは、患者が院長の人柄や診療方針に信頼を寄せて長年通院しているケースが少なくありません。この信頼関係と、定期的なフォローアップを可能にする設備が両輪となってクリニックの価値を形成しています。
承継を成功させるには、単なる「設備の引き継ぎ」ではなく、患者との関係性や継続診療の情報資産もセットで伝える姿勢が求められます。
承継時に問われる
“内視鏡の引き継ぎ方”と
稼働状況の整理
機器の状態・減価償却を把握する
内視鏡装置をはじめとする医療機器はクリニックの資産であり、承継時の評価に大きな影響を与える要素です。
特に注意したいのは、「年式」「耐用年数」「減価償却の残存期間」「保守契約の有無」などです。たとえ古い機器でも、定期的なメンテナンスが施されて稼働に問題がない状態であれば、後継者にとって価値ある設備と見なされます。
一方で、故障リスクが高い、サポートが切れている機器はマイナス評価になる可能性があるため、状態の整理と関係書類の準備が重要です。
稼働状況のデータを用意する
後継者が医療機器の導入状況を評価する上で、重要なのは実際の「稼働実績」です。
たとえば、「月に何件の内視鏡検査が行なわれているか」「検査予約は埋まりやすいか」「どの時間帯が混雑しているか」といった稼働データは、クリニックの実力を示す根拠になります。
こうした情報を事前に整理して提示できれば、単なる設備の有無ではなく「地域ニーズに根ざした稼働実績」が伝わり、承継の魅力を高める材料になります。
患者紹介ネットワークの整理
内視鏡検査では、より精密な検査が必要な場合に高次医療機関へ患者を紹介するケースも多く、そうした紹介ネットワークの存在もクリニックの価値の一部です。
地域のがん診療連携拠点病院や専門医療機関への紹介ルートが確立している場合、それを一覧化しておけば後継者にとって心強い情報になるでしょう。
患者紹介は信頼関係に基づくものであり、そのつながりを見える形で承継することが地域との信頼関係も守ることになります。
患者との長期的信頼関係を
言語化・見える化する
重要性
属人性を資産に変える方法
「この先生だから通っている」という声が多いクリニックは、属人性の高さが強みである一方、それが承継時には大きな不安要素になりがちです。そこで大切なのが、診療方針や患者対応の姿勢を「言語化」しておくことです。
たとえば、「問診ではどこを重視しているか」「検査方針の判断基準」「治療継続における配慮」などを文書化しておけば、後継医師がクリニックのカラーをスムーズに引き継げます。これは患者の安心感にもつながり、これまで築いてきた信頼関係の継続が期待できます。
患者説明のタイミングと対応マニュアル
特に内視鏡検査を定期的に受けている患者にとって、担当医の変更は不安の種になります。「検査はこれまでどおり受けられるのか」「説明スタイルは変わらないか」といった不安を払拭するには、タイミングを見計らった丁寧な説明が効果的です。
また、変更に伴う案内文やFAQ、電話応対のマニュアルなどをスタッフと共有しておけば、全体の対応が統一され、患者が混乱するリスクを抑えられます。
患者・一般スタッフへの開示はあくまで最終譲渡成立後速やかに実施しましょう。そのためには、譲渡前からの準備が大切です。
リピート患者の経過管理台帳
消化器内科は、定期的に内視鏡検査を受ける患者や慢性疾患を抱える患者が多く、経過観察の記録が非常に重要です。電子カルテの医師記録だけではなく、定期検査の予定や服薬指導、患者ごとの注意点などを整理した経過管理台帳を作成しておくと、後継医師が患者の背景を理解しやすくなります。
こうしたツールは単なる記録の意義を超え、信頼関係を引き継ぐ「橋渡し」の役割を果たしてくれます。
スタッフの役割と教育体制が承継の鍵
内視鏡検査を支えるスタッフのスキル
消化器内科において、当然ですが内視鏡検査は院長一人では完結しません。内視鏡の補助や麻酔管理、スコープの洗浄など、知識と経験が求められる作業を熟練のスタッフが担っています。スタッフのスキルは、クリニックの「診療の質」に直結する重要な資産です。
承継にあたっては、スタッフの役割や業務内容をしっかり整理し、後継者にその力量と価値を伝えることがスムーズな診療継続とクリニックの魅力の維持につながります。
患者説明の属人性をカバーする
「先生が忙しいときは、看護師さんが丁寧に説明してくれる」、そういうプラス印象をクリニックに対して持っている患者も多いでしょう。スタッフによる患者への声かけ、フォローアップの内容が属人化している場合は、それを言語化・マニュアル化しておくことが大切です。
たとえば、内視鏡検査前後の案内や食事制限の説明、結果の伝え方など、対応の質を保つための「型」があるかどうかで承継後の患者満足度は大きく左右されます。
後継者とスタッフの相互理解
スタッフが後継医師に不安を抱いたまま承継が進むと、対応の不一致や離職といったトラブルの火種になります。理想的なのは、承継が決まった段階で引き継ぎ研修やスタッフとの面談機会を設け、相互理解を深めることです。
後継者がスタッフの能力を正当に評価し、スタッフも新しい体制に安心感を持てる関係性を築ければ、継続的なチーム医療を実現できるでしょう。
消化器内科における
第三者承継の成功例
立地と院内設備が決め手となった例
(首都圏)

消化器外科医
25年続く小児科、内科も兼ねた消化器外科の院長は、定年を区切りと考えており、クリニックの承継を検討。医師として働く息子がいたものの、承継の意思がないため第三者承継を決心。
「診療を継続する」「既存スタッフをそのまま雇用する」という条件と譲渡金額がやや高めであったため、1年以上買い手が見つからず、医業M&A仲介会社に相談。
候補先の医師が希望するエリアではないが、首都圏郊外の駅から徒歩数分の好立地。かつ、競合クリニックが少ないエリアに立地。内視鏡設備が整っている点が、候補先である医師にとって魅力。
最終的に、「立地」と「院内設備」が決め手となり成約した。
親族承継したものの、
経営が
負担となり
第三者承継した例
(関東)

消化器内科医
70年続く内科・消化器内科クリニックの現院長は先代の息子。先代の急死により、やむを得ずクリニックを承継した。経営は安定していたが、大きな負担に感じていたため、売却を検討。
売却へと動き出したが、「経営・勤務医として残ってほしい」という条件や金銭面などの点から契約を見送った。
最初のマッチングで失敗したことから、第三者承継は難しいのではないかと消極的になっていた。
候補先は、東北で内科・消化器内科で診療を行う医師。関東への移住を検討しており、承継開業できるクリニックを探していた。
面談から約3ヶ月で成約。お互いの専門分野が共通していたこと・お互いをリスペクトする信頼関係を築けたことが早期成約につながった。
消化器内科クリニックの承継では、内視鏡などの医療機器と、慢性疾患の継続診療により築かれた患者との信頼関係の両方が重要な資産です。承継成功には、設備の状態・稼働実績の可視化とあわせて、診療方針・患者対応・スタッフの役割を言語化し、チーム医療体制を維持する工夫が不可欠です。

SAコーポレーション
12年クリニック運営を経験し、その後M&Aを行った宮﨑医師が、自分自身の経験をもとに、「医師が満足できる、幸せになれる医業承継を実現したい」とSAコーポレーションを設立。
十分な準備期間を経て、クリニックの価値を上げたうえで行うM&Aを提唱し、その情報発信やサポートを行っています。
