医業承継に必要な財務・人事・理念の整備
当サイトは株式会社SAコーポレーションをスポンサーとしてZenken株式会社が運営しています。
この記事でわかること
- 医業承継において整備すべき3つの柱(財務・人事・理念)
- 「見える化」が承継準備と交渉に与える影響
- 買い手が不安を感じるクリニックの特徴
- 院長とスタッフが協力して承継準備を進めるメリット
承継前に整えるべき3つの柱
財務:売上・費用の整理と透明化
クリニックの価値を正確に評価してもらうには、財務状況の透明性が欠かせません。
月次売上や診療科別の収益、主要な費用の内訳を整理し、過去3年分程度のデータを揃えておくと、買い手に安心感を与えられます。
また、季節変動や自由診療の割合など、数字の裏側にある傾向を示すことも大切です。必要に応じて税理士などに確認してもらい、勘定科目の分類や経費処理の妥当性もチェックしておきましょう。
こうしたM&Aの下準備が整っているクリニックは、承継後の収益の持続性を具体的に示せるため、条件交渉を有利に進められます。
人事:雇用契約・役割分担の明文化
スタッフの勤務形態や待遇が不明確なままでは、承継後の運営に不安が残ります。就業規則や雇用契約書、勤務シフトのルールなどをきちんと文書化し、役割分担を明確にしましょう。
属人的業務を減らすために、日常業務のマニュアル化やジョブローテーションを行なうことも有効です。スタッフのキャリアや勤務年数、休暇の取得状況なども整理しておけば、後継者がスムーズに管理を引き継げます。人事の整備はスタッフの安心感を高め、それが離職防止に直結します。
理念:自院の診療方針の“言語化”
財務や人事と同じく、クリニックが大切にしてきた診療方針や理念も承継の重要な要素です。「この地域でどんな役割を果たしてきたのか」「患者との関係性で重視していることは何か」といった思いを明文化しておくと、後継者も地域社会や患者にアピールしやすくなります。
何より、明確な理念は承継後の方向性のずれを防いでくれるものです。買い手もクリニックが何を価値としてきたかを理解できるため、承継後の運営方針を立てやすくなります。理念は単なるスローガンではなく、クリニックの存在意義を伝える重要なツールなのです。
整っていないと買い手が
不安になるポイント
数字の裏付けがないと収益が
信用されない
いくら売上や利益を提示しても、根拠となる数字が整っていなければ、買い手は収益性を信用できません。
特に医業承継では、診療報酬の内訳や自由診療の割合、季節変動の傾向など、数字の背景説明が求められます。単に「黒字です」と示すだけではなく、過去の推移や安定性を裏付けるデータを揃えることで、初めて収益の継続可能性を具体的に示せます。
財務データが曖昧なままだと、買い手は将来的な下振れリスクを織り込んで条件を下げることもあります。
スタッフの定着状況が見えない
承継後もスタッフが勤務してくれるかどうかは、買い手にとって重要な判断材料です。勤務年数や雇用条件、休暇制度、離職率といった情報が整理されていないと、運営の安定性が不明瞭になり、買い手から不安視されます。
また、スタッフの役割分担や業務マニュアルの有無などもチェックされるポイントです。ベテランスタッフの存在やチームワークの良さが確認できれば、買い手は安心して承継を進められます。そういった情報が見えなければ、運営の引き継ぎが困難だと判断されるかもしれません。
診療方針が属人化している
院長の経験や判断が強く反映されている診療方針は、後継者が再現できない可能性があります。患者対応や診療の流れが暗黙知のまま残っていると、買い手にとっては承継後の診療を滞らせるリスクになります。
したがって、承継前に診療方針や治療プロトコル、患者への説明方針などを明文化し、共有できる形にしておくことが重要です。
「言語化」による引き継ぎは、患者からの信頼を保ちながら運営を続けるカギになります。
「見える化」は効果的な
引き継ぎツール
何をどこまで見える化するか
承継準備における「見える化」は、後継者への引き継ぎを円滑にするための大きなポイントです。
月次の売上推移や診療科目別の収益構成、患者層の年齢分布や疾患傾向といったデータはもちろん、スタッフの配置や役割をまとめた体制表なども重要です。これらをひとつのファイルやクラウド上に整理しておけば、後継者はクリニックの全体像を短期間で把握できます。
数字や情報の透明性が高いほど、承継交渉時の信頼性も高まります。
言葉にするだけでも価値になる
診療方針や理念、患者との向き合い方など、日々の業務の中で培われた「クリニックのこだわり」は言葉にしなければ引き継ぐことができません。たとえ短い文章でも、院長自身の考えを明文化することで、後継者は方向性を固めやすくなります。
「なぜこの診療スタイルを続けてきたのか」「地域にどう貢献してきたのか」を整理することは、スタッフや患者との信頼関係をつなぐためにも有効です。このような理念や価値観は目に見えない資産であり、承継後のクリニック経営の基盤になります。
スタッフと一緒に進めるとスムーズ
「見える化」は院長だけではなく、スタッフと一緒に進めるのが理想です。マニュアル作成や役割分担の見直しをチームで行なえば、それだけでも自然と属人性が減り、誰が休んでも業務が回る体制が整っていきます。
何より、スタッフが主体的に承継準備に関わることで、承継への理解や協力姿勢も高まります。結果として後継者がスムーズに業務を引き継ぎやすくなり、患者への影響も最小限に抑えられるでしょう。
医業承継を円滑に進めるには、財務・人事・理念の整備が不可欠です。数字や診療方針を「見える化」することで、買い手の信頼を得やすくなり、承継後の方向性のズレや混乱も防げます。特にスタッフとの協働による準備は、属人性の解消と運営安定化に直結します。目に見えるデータと、言葉にした理念の両輪で、承継価値は大きく高まります。

SAコーポレーション
12年クリニック運営を経験し、その後M&Aを行った宮﨑医師が、自分自身の経験をもとに、「医師が満足できる、幸せになれる医業承継を実現したい」とSAコーポレーションを設立。
十分な準備期間を経て、クリニックの価値を上げたうえで行うM&Aを提唱し、その情報発信やサポートを行っています。
