整形外科・リハビリ型クリニックの医業承継のポイントと事例
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この記事でわかること
- 整形外科クリニックにおける設備・人材の資産価値と評価のポイント
- 理学療法士・作業療法士(PT・OT)との連携体制の承継方法
- 医療機器の稼働状況や契約整理が与える承継への影響
- 物件条件・動線設計など、患者満足度に直結する院内環境の評価視点
整形外科の特徴
設備と人材が成功の鍵
設備依存型だからこそ資産価値が明確
整形外科クリニックの資産は医療機器の占める比重が大きく、レントゲン装置やリハビリ機器、物療機器といった設備の状態がクリニックの価値に直結します。これらの機器は資産として数値化しやすく、承継においても評価されやすい点が特徴です。
稼働率や耐用年数、リース契約の有無などを事前に整理しておけば、買い手側の安心材料になるでしょう。こうした裏付けは、価格交渉をスムーズにすすめるためのポイントのひとつです。
人材=PT・OTの安定性が医院の魅力
整形外科の領域では、理学療法士(PT)や作業療法士(OT)の存在がクリニックの信頼を支えているケースも多くあります。患者と密な関係を築いているスタッフが承継後も働き続けることは、患者の離脱を防ぎ、ひいては承継の成否を左右する重要な要素です。
承継医師がスタッフの専門性や働き方を尊重し、事前にしっかり連携体制を整えることが、クリニックの魅力をそのまま受け継ぐためには欠かせません。
患者の通院期間が長い
整形外科では、慢性疾患や術後リハビリなど長期通院が前提の患者が多く、クリニックへの信頼も深く根づいているケースが多いと考えられます。そのため、患者は承継による変化に対して敏感な傾向があり、丁寧な説明や段階的な引き継ぎが求められます。
患者の不安を軽減し、継続的な診療体制を確保するには、新院長とスタッフの連携や診療スタイルの共有が非常に重要です。
PT・OTとの連携体制と
その維持方法
スタッフが担う属人的サービス
前述のとおり、整形外科では理学療法士や作業療法士が患者と密接な信頼関係を築いています。施術だけではなく、会話を通じた心理的サポートや回復の進捗管理も担っており、ある意味では属人的なサービスもクリニックの強みになっています。
これらを承継するためには、患者情報の記録やリハビリの進行状況を共有できるツールやマニュアルの整備が有効です。仕組み化によって、属人性を強みに変えられます。
後継者とスタッフの相互理解
スムーズな承継には、承継医師と既存スタッフとの信頼関係づくりが欠かせません。引き継ぎ面談を通じて、それぞれの役割や価値観を確認し合うことも重要です。また、治療方針やリハビリの考え方に相違があっても、意見交換の場を設けることでスムーズな協働体制が築かれます。
お互いに信頼し合って働ける環境があれば、スタッフのモチベーションも維持され、それが患者満足度の向上にもつながります。
スタッフの離職リスクを下げるには
承継時により注意したいのは、主要スタッフの離職リスクです。体制変更に対する不安を和らげるには、雇用条件の再確認や待遇面の見直しが必要です。
特に理学療法士や作業療法士には、この先に向けたキャリアパスを示すことも有効です。将来の役割やスキルアップの方向性を共有することで、安心感とともに「この場所で働き続けたい」という意欲を高められます。
物件・動線設計も評価対象になる
動線設計が患者満足度に直結
整形外科では高齢者の通院も多く、動線設計は患者満足度に大きく影響します。バリアフリー対応はもちろん、待合室の広さや椅子の配置、トイレの場所なども要チェック項目です。
また、リハビリ室へのアクセスのしやすさも通院の継続性に関わる要素です。設備の豪華さよりも、使いやすさや安心感が評価されやすく、これらはM&A時のアピールポイントにもなります。
リハビリ室の広さと分割運用
整形外科クリニックにおけるリハビリ室のレイアウトは、診療効率や稼働率に直結します。スペースが広ければ目的別のゾーニング(電気治療エリア、ストレッチエリアなど)が可能で、複数の患者に対応できます。
こうした運用実績を見える化しておくことで、後継者にとって導入イメージが湧きやすく、それもクリニックの魅力を高める一因になります。
物件条件を引き継ぐときの注意点
整形外科に限りませんが、クリニックの承継には建物の賃貸契約や所有形態の確認が必須です。賃貸の場合は契約更新の可否や賃料改定要件、共有スペースの取り扱い等に注意が必要です。
また、立地条件や周辺環境の変化、駐車場の有無もアクセス性、ひいては患者数に影響します。これらの条件を明確に整理し、事前に買い手に伝えることでトラブルを避けられます。
マシンの更新時期や
リース契約の整理
保守契約・耐用年数を明確にする
整形外科で使われるレントゲン装置や治療機器などの多くは、定期的な法的点検や保守契約が必要です。承継時にはメンテナンス履歴や修理状況を一覧にし、整理しておくことが重要です。リース契約が残っている場合は、残存期間や月額費用を明確にしましょう。
後継者にとって財務リスクの把握が容易になり、スムーズな交渉につながります。
機器更新予定が承継価格に影響する
医療機器の更新時期も、承継価格に大きく影響します。耐用年数が近い場合は更新せずに売却するか、それとも新しい機器に入れ替えてクリニックの価値を高めるか、そこは売り手の経営判断が求められます。
特にレントゲン装置や物理療法機器など高額な設備は、将来的な償却や修繕費も含めた総合的な視点での整理が必要です。
後継者が活用しやすい状態に
クリニックの医療機器は、後継者がそのまま使える状態にあることが理想です。そのためには、不要な機器の整理・処分を含め、クリニック全体の状態を見直すことが求められます。
また、買い手の診療スタイルや導入を検討している設備との兼ね合いも考慮し、事前に意向をヒアリングしておけば、引き継ぎ後の不満や誤解を減らせます。
承継を成功させるための
対策・改善の例
機器の稼働状況を可視化することで、
クリニックの価値を上げる
レントゲン装置やリハビリ機器の稼働状況を具体的なデータにして整理します。買い手に使用頻度や予約状況、稼働率を提示することで、設備が現役で活用されている実態が明確に伝わります。
買い手としては、すぐに高額な設備投資が必要ないと判断できるため、安心して契約を決断できます。結果として、想定よりも高い譲渡額で承継が成立することも期待できます。
スタッフの引き継ぎで患者離れを防ぐ
リハビリ中心の診療を行なっているクリニックでは、承継後も理学療法士や作業療法士が継続して勤務することが、患者からの信頼を守るカギとなります。
この場合、最終譲渡成立後速やかに後継者とスタッフが何度も面談を行ない、診療方針や患者対応について共通認識を持つことがポイント。患者の不安を軽減することにつながり、通院患者数の維持につながります。
患者にとって快適な環境にすることで評価アップ
開業から一定年数が経過している整形外科クリニックでは、玄関スロープの拡張やリハビリ室の動線改善など、患者の通いやすさを意識した小規模な改修が必要なケースが多くあります。こうした動線改善などを行うことで、高齢患者やリハビリ通院患者にとって快適な環境が整い、地域ニーズに合致したクリニックという評価につながります。
整形外科における
第三者承継の成功例
充実した設備が売り手・買い手に
メリットを
与えた例(首都圏)

整形外科医
2つのクリニックを運営する医療法人の60代院長は、じきに息子に承継したい。息子には1つのクリニック運営に集中してほしいため、もう1つは第三者承継したい。
第三者承継予定のクリニックには、手術室やCTなどの充実した設備があり、その設備をそのまま使ってくれる候補先を探したい。
医業M&A仲介会社への相談から1ヶ月以内に承継先を決めたい。
候補先の医師は「首都圏で手術室や医療機器付きの案件」を探していた。院長は医療機器等を廃棄せずに譲渡対価を得られ、候補先は医療機器も含めて相場よりも安く承継できるという、ウィン・ウィンの状態。
院長の理念と合致した
経験豊富な
医療法人に
承継した例(横浜)

駅近の商業ビルに1995年から続くクリニックは、30年以上の実績を積んできた。盛業時は200名を超える患者が通院していたが、近年は新患数が減り、後継者もいないため閉院を検討。建物の賃貸借契約の更新時期に閉院を予定しており、それまでに後継者を探し出し、第三者承継を行いたい。 。
賃貸借契約更新時期までに承継したいため、時間的な制約がある。
既存スタッフを承継後も再雇用してほしい。
患者さんやスタッフが高齢化しているため、診療体制の維持が困難。院長の想いを引き継ぎつつも事業を発展できる候補先が希望。
最寄駅から徒歩3分の好立地にあるうえ、地域での知名度も高い。承継先は医療施設の運営経験豊富な医療法人であり、ノウハウがある。院長の理念に合う候補先であり、「既存クリニックの将来の発展」「既存患者やスタッフの高齢化への対応」を実現できる。
整形外科クリニックの承継では、医療機器やリハビリ設備といった「設備資産」と、理学療法士などの専門スタッフによる「人材資産」が成功の鍵を握ります。属人性の高いリハビリサービスを仕組み化し、稼働状況や契約内容を整理することで、後継者にとっても安心感のある引き継ぎが可能になります。

SAコーポレーション
12年クリニック運営を経験し、その後M&Aを行った宮﨑医師が、自分自身の経験をもとに、「医師が満足できる、幸せになれる医業承継を実現したい」とSAコーポレーションを設立。
十分な準備期間を経て、クリニックの価値を上げたうえで行うM&Aを提唱し、その情報発信やサポートを行っています。
