M&Aで本当に地域医療は続くのか?
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この記事でわかること
- 医業M&Aが「地域医療をつなぐ」選択肢である理由
- 実際にM&Aで地域医療が継続された成功事例
- スタッフや患者への影響を最小限にするための具体的な配慮方法
- 医院の理念や地域との信頼関係を引き継ぐために重要なこと
M&Aは“診療所をなくす”
ことなのか?
閉院とM&Aの違いとは
医業M&Aに対して、「結局は医院を閉めることなのでは?」と考える方もいるかもしれません。しかし、廃業と承継では地域への影響が全く異なります。
廃業は、診療機能そのものが地域から失われることを意味します。患者や地域住民にとっては、医療アクセスの喪失という深刻な問題を引き起こします。
一方、M&Aによる承継は、診療体制や医療サービスを維持したまま経営者がバトンを渡す方法です。患者からすると「いつもの医院でいつものように診てもらえる」状態が保たれます。
誰のためのM&Aか?
M&Aは、決して経営者の「出口」だけを目的としたものではありません。むしろ、患者や地域住民の医療アクセスとスタッフの雇用を守るという、社会的な意味を持つ選択肢です。後継者がいないまま診療を続け、高齢や病気によってある日突然閉院を余儀なくされた場合、残されるのは行き場のない患者とスタッフです。
M&Aは、地域に必要な医療機能を継続させるためのひとつの手段です。「誰のための決断か」を考えるとき、それは地域と医療現場の未来を守る行為でもあるといえるでしょう。
「買収される=乗っ取られる」ではない
M&Aにネガティブなイメージを持つ方も確かにいます。特に「買収=乗っ取り」のような誤解があると、承継に踏み出すのをためらってしまうかもしれません。
しかし、実際に経営母体が変わっても、医院の名称や診療体制、スタッフ構成をできる限り維持しながら、地域に根差した医療を続けるケースは多く見られます。
買い手側も既存の信頼関係を大切にし、地域に溶け込んでいけるような運営を目指しています。M&Aは「辞める」のではなく「つなぐ」選択であるという認識を持っていただければと思います。
実際に地域医療を守った事例
約22年貢献してきた
地域医療のバトンを
納得いく形でつないだ例

葛南エリア
内科医師
診療科目が異なる息子は承継意思なし
院長は当初、医師の息子に承継を考えていました。そのためクリニックを医療法人化していましたが、息子の診療科目が異なり承継意思がないことが判明。院長自身も高齢となり体力的限界を迎えたため、医療法人を解散し、第三者承継の道を選択しました。
承継にあたり、院長はクリニックへの思い入れから「患者を安心して任せられる、人柄の良い医師」を希望。
好立地と高利益な経営状態により複数の候補者が現れましたが、物腰が柔らかく丁寧な対応の後継者と出会い、診療方針や考え方が一致したことで成約に至りました。
クリニックの理念と地域医療が
守られた
円滑な承継を目的として、後継者となる医師はクロージングまでの約4か月間、非常勤として勤務。院長から患者の引き継ぎや経営ノウハウを学び、スタッフとの関係構築も進めました。このように丁寧な引き継ぎ期間を設けることで、クリニックの理念と地域医療が守られる結果となりました。
地域医療を支えてきた
内科・小児科クリニックの承継例

内科・小児科医師
元気なうちに承継の検討へ
開業から20年近く、内科・小児科として地域に貢献してきたクリニック。後継者がいないため、院長が元気なうちに第三者承継したいという思いがありました。
ネックとなる要素がたくさん
クリニックは、最寄り駅から徒歩20分の郊外に立地。内科・小児科を両方診られる医師が少なく売上維持が難しい点、土地・建物付きで投資額が大きい点、地域の高齢化が進み、将来的な過疎化が懸念される点など、課題がたくさんありました。
訪問診療で将来性も
しかし、院長と買い手がともに地域密着型の医療を理想としていたことが、成約の大きな決め手となりました。また、買い手は競合が少ない地域であることに加え、小児科の売上減少を訪問診療で補う計画を立てたことで、将来性があると判断しました。
複数の候補者の中から、診療理念が共通する医師に承継を決めました。院長が「ぜひこの先生に」と強く希望するほど意気投合し、遠方からの転居もいとわず承継が実現しました。
スタッフや患者に
どう配慮できるのか?
スタッフの雇用はどうなる?
医院の承継を検討する際、スタッフの雇用を継続できるかどうかは院長にとって大きな課題です。実際のM&Aにおいては、交渉の段階でスタッフの雇用条件や待遇を極力維持するよう取り決めることが多く、安心して働き続けられる環境を整える配慮がなされます。
急な変化を避けるために、段階的な引き継ぎや待遇の丁寧な説明を通じて、スタッフの不安を和らげる工夫も重要です。なじみのある環境が保たれることで、スタッフの離職リスクが抑えられ、患者にとっての安心感にもつながります。
患者さんに不安を与えないために
M&A後も患者が安心して通院できるようにするためには、引き継ぎの告知タイミングや内容がカギを握ります。「急に変わる」という印象を与えないように、一定の期間を設けて段階的にアナウンスすることで、患者の理解と納得を得られやすくなります。
また、診療時間やスタッフ構成、診療内容といった基本的な部分の変化を最小限に抑えることで、患者の生活リズムや通院パターンを崩すことなく診療を継続できます。
こうした細やかな配慮が、「これまで通り受診できる」という患者の安心感を生み、離脱を防ぐ効果にもつながります。
信頼関係を断絶しないために
院長と患者、スタッフの間には、長年にわたって築かれた信頼関係があります。これを断絶させないために、M&A後も前院長が一定期間は医院に関与するという形を取るケースもあります。週に数日の診療支援や、名誉職的な立場でのアドバイスなど、柔軟な関わり方ができるでしょう。
また、前院長が「この先生なら安心して任せられる」と公に伝えることも、患者やスタッフにとって大きな安心材料になります。このような丁寧な橋渡しが、スムーズな承継とその後の安定運営を支える礎になります。
引き継ぎや理念の共有で
守れるもの
理念を引き継ぐという考え方
医院は単なる医療の提供の場ではなく、院長の価値観や地域への思いが息づいた場でもあります。M&Aによって経営が引き継がれたとしても、その思いを後継者に伝えられるかどうかが承継の成功を左右します。
診療方針やスタンス、地域への関わり方など、目に見えない理念を共有することは、医院の信頼を継続させるために欠かせません。後継者に対して、自院が何を大切にしてきたのかを丁寧に伝えることが、承継後のブレのない運営へとつながります。
スタッフ教育の引き継ぎ
クリニックの雰囲気や信頼関係は、院長だけではなく受付スタッフや看護師など、日々患者に向き合ってきたメンバーがつくり上げてきたものです。そのため、単に「医師の交代」というだけでは済まないのが医業承継の難しさです。
スタッフ教育の内容や患者応対の姿勢、チーム内のコミュニケーション文化など、日常の運営に関わる「空気感」の共有も重要です。承継を機に業務を標準化しつつも、これまで大切にされてきた職場風土を新しい体制にも引き継ぐことが、地域に根ざした診療の継続を支えます。
地域とのつながりを守るポイント
地域住民との信頼関係や自治体、他の医療機関との連携も医院の財産です。特に長年にわたって同じ場所で診療を続けてきた場合、その関係性をいかに後継者に伝えるかが問われます。
たとえば、地域行事への参加や学校医・産業医などの役割、地元団体とのつながりなど、診療以外の活動からも多くの信頼を築いているはずです。
こうした関係性を文書化して引き継いだり、早めに新体制を紹介する機会を設けたりするなど、配慮ある対応が信頼関係を継続させていきます。
医業M&Aは単なる「事業売却」ではなく、地域医療を未来へつなぐための前向きな選択肢です。理念や信頼関係を丁寧に引き継ぐことで、患者・スタッフ・地域社会すべてにとって価値ある承継が可能となります。医業の「終わり」ではなく「継続」のために、計画的かつ配慮あるM&Aを考えることが求められています。

SAコーポレーション
12年クリニック運営を経験し、その後M&Aを行った宮﨑医師が、自分自身の経験をもとに、「医師が満足できる、幸せになれる医業承継を実現したい」とSAコーポレーションを設立。
十分な準備期間を経て、クリニックの価値を上げたうえで行うM&Aを提唱し、その情報発信やサポートを行っています。
