M&Aの買い手にはどんな医療機関がいるのか?
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この記事でわかること
- 医業M&Aにおける代表的な買い手の4タイプとその特徴
- 買い手が医院を求める主な理由と背景
- 承継後のクリニック運営スタイルの違いと影響
- 信頼できる買い手を見極めるためのポイント
医業M&Aにおける
主な買い手のパターン
医療法人(エリア拡大型/事業補完型)
すでに運営している医療法人が、分院展開や診療科の拡充などを目的に買収するケースです。
たとえば、内科中心の医療法人が他科のクリニックを買収することで、総合的な診療体制の構築を目指す、といった流れです。診療圏の拡大だけではなく、医師不足のエリアにおいて地域貢献を意識した展開も増えています。
個人医師(勤務医→開業希望型)
新規開業に要する準備の手間や初期投資を抑えたい勤務医が、既存のクリニックを「居抜き」で引き継ぐスタイルです。
設備やスタッフが整った環境で、既存の患者を維持したまま診療を始められるため、一定の人口を有する都市部で注目されやすい選択肢です。承継後も一定期間は前院長がフォローする体制が整えば、なおのことスムーズに進むでしょう。
医療系ベンチャー
(訪問診療などの再編・拡大目的)
在宅医療など特定の分野に特化した医療系ベンチャーが、ネットワークの再編や拡大を目指してM&Aを行なうケースです。
ITの活用や業務効率化に強みを持つ法人も多く、急速にエリアを拡大している例もみられます。ただし、地域からの信頼や診療スタイルとの相性に配慮しなければ、患者離れにつながるリスクもあります。
社会医療法人(支援型・グループ化)
収益もさることながら、地域医療の継続や安定化を重視し、後継者が不在あるいは経営が不安定な医療機関を支援的に引き継ぐスタイルです。
グループ化によって医療資源が効率的に活用され、連携の強化や医師の働きやすさにもつながります。社会医療法人は公益性が高く、医療圏の保全という視点でも注目される買い手です。
それぞれの買い手が医院を
求める理由
エリア展開
医療法人などが複数の拠点を構えると、診療圏の拡大やグループ内連携の強化を図れます。したがって、周辺エリアでの法人ブランド浸透やスケールメリットを狙って、立地や患者層が魅力的な医院がターゲットになります。特に都市郊外や人口増加地域の医院は、買い手から注目されやすい傾向にあります。
特定の診療科・患者層の強化
たとえば「糖尿病内科+眼科」「小児科+耳鼻咽喉科」など、親和性の高い診療科を組み合わせることで、より専門性の高い医療体制を構築できます。また、在宅医療に強みを持つ医院を買収することで、高齢者医療への対応を強化する動きもみられます。
医師の確保(人材面の補完)
地方や過疎地では、医院の経営を引き継ぐことで貴重な医師やスタッフの雇用を維持し、グループ全体の診療体制を支えることもM&Aの目的になり得ます。後継者の確保が難しいエリアでは、買収した医院に勤務医を派遣することが医療空白を避ける手段になります。
地域医療維持のための社会的責任
社会医療法人や、自治体との連携を意識した法人は、採算だけではなく「地域に医療を残す」ことも重視します。買収によって診療機能を維持し、患者や地域住民への影響を最小限に抑える姿勢が背景にあります。医療の公共性を支える役割を果たしているといえるでしょう。
売却後はどうなる?
買い手による承継スタイルの違い
名称・スタッフ・診療方針は
引き継がれるのか?
買い手によってスタイルは異なりますが、患者の継続受診や地域における信頼関係を重視する法人では、クリニック名やスタッフ体制、診療時間、方針などを可能な限り維持するようです。特に個人開業医の承継では、「変えないこと」が買い手のメリットとされるケースが多く見られます。
医師がしばらく残るパターンも多い
(支援・移行)
承継後すぐに前院長が退くのではなく、一定期間は勤務医として残り、診療や患者対応、スタッフ教育などをサポートするパターンもあります。買い手にとっては経営や現場のスムーズな引き継ぎが可能になるほか、地域との関係性を維持する上でも効果的です。
診療報酬・業務体制の変更の有無
承継後、買い手の方針に応じてレセプト請求や業務体制が見直されることもあります。ただし、買い手も現場の混乱を避けるため、スタッフ教育やシステム調整を丁寧に進めていくでしょう。業務フローの変化に備えることも、円滑な承継には欠かせません。
買い手の“質”は
どう見極めればいいか
仲介会社や支援者が担う
フィルタリングの役割
売り手がすべての買い手候補を直接精査するのは現実的ではありません。そのため、医業M&Aの仲介会社や専門の支援者が、買い手の経営姿勢や財務状況、過去の実績などを事前に確認し、適切な候補だけを紹介する「フィルター役」を担います。信頼できる支援者の存在が、安心感のある承継につながります。
医療理念・ビジョンの一致を見るための面談
候補者との面談は、単なる条件交渉ではなく「価値観のすり合わせ」の場でもあります。患者との関わり方や地域貢献への姿勢、スタッフとの関係構築など、理念の共有の度合いが高い相手こそ、クリニックを託すのに相応しい存在です。対話を重ね、信頼関係を築ける相手かどうかを見極めましょう。
売却条件よりも“誰に託すか”を
優先すべき理由
金銭面の条件だけにとらわれると、承継後に患者離れやスタッフの離職など、思わぬ代償を招きかねません。理念の共有や現場への理解が深い買い手であれば、承継後の混乱を抑え、長く地域に貢献できる医療体制が続いていきます。「高く売る」よりも「大切に引き継ぐ」という視点が大切です。
医業M&Aでは、医療法人や勤務医、ベンチャー企業など多様な買い手が存在し、それぞれの目的や承継スタイルに違いがあります。売却後の方針変更や地域医療への影響を最小限に抑えるためには、理念の一致や誠実な姿勢を持つ買い手を選ぶことが不可欠です。条件面よりも「誰に託すか」を重視し、支援者とともに慎重に見極めていくことが、後悔のない医業承継への第一歩となります。

SAコーポレーション
12年クリニック運営を経験し、その後M&Aを行った宮﨑医師が、自分自身の経験をもとに、「医師が満足できる、幸せになれる医業承継を実現したい」とSAコーポレーションを設立。
十分な準備期間を経て、クリニックの価値を上げたうえで行うM&Aを提唱し、その情報発信やサポートを行っています。
