父のクリニックをM&Aで譲渡した医師
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後継者がいない、でも地域医療を途絶えさせたくない。そんな悩みを抱える医師は少なくありません。このページでは、急遽お父様のクリニックを承継することになった大学病院で働く現役医師に話を聞いています。
父の突然の引退と
急遽迫られた承継
なぜ、承継が必要になったのでしょうか。
承継が必要になったのは、父がもう働けなくなってしまったからなんです。父は元気なうちはできるだけクリニックを続けたいという強い思いを持っていたので、とくに準備をしないまま、突然倒れてしまいました。そのため、急遽必要に迫られて、というのが本音です。
私自身も大学病院でもう少し働きたいという意向が強かったので、父が働けなくなる前から準備していたということもなく…。そのため、実際にM&Aの最終契約に至るまで半年くらいという、かなりバタバタとした中で進めることになりました。もしもっと準備期間があったら、他の選択肢も考えられたかもしれません。
検討した選択肢と
最終的なM&Aの決断
まず、一つは私がその医療法人をそのまま引き継いで、管理者として運営していくという形です。例えば、診療を週に1日か2日くらいに減らして、あとは他の先生たちをアルバイトとして迎え入れる。あとは営業日自体を減らして、オンライン診療などをうまく組み合わせて、営業日は少なくても全体の患者数を確保する、といった方法も考えられました。
もう一つは、「完全譲渡」という形で、クリニックをまるごと売却してしまうことですね。そして、一番楽だとは思ったんですが、「廃業」という選択肢もありました。しかし、本当に地方のクリニックだったこともあり、それまで雇っていた看護師さんや事務スタッフ、薬局の薬剤師さんたちが職を失ってしまう可能性も考えられました。「それは一番良くない」と思い、雇用を守れる形を優先したいと考えていました。
正直、最初はぼんやりと「完全譲渡」を考えていました。ただ、先程申し上げたように、時間がなかったので、色々な選択肢を自分自身でじっくり比較検討する余裕がなかったのが正直なところです。そのため、まず仲介会社に相談することにしました。ネットで医療情報サイトの広告や病院に届くダイレクトメールなどを見て、医療系に特化した仲介会社を3社ほど探し、その中で一番反応が良かったところに依頼することになったんです。
この仲介会社から、「完全譲渡だと一時的にまとまったお金が入るけれど、税金でかなり持っていかれて手元に残るお金がほとんどない」という話を聞いて、最終的に、オーナーとして医療法人に在籍し、家賃や給与などを支払ってもらうという形の方が税金的にプラスになるということで、そちらを選択しました。
M&Aを通して感じた課題と
今後への教訓
そうですね、冒頭に申し上げたように、別の形も模索できたのではないかということが第一。
また、時間がなかったことで、仲介業者の選定についても、十分に比較検討する余裕がありませんでした。細かい条件まで詰めて決めるというよりは、本当に「印象」だけでお願いしてしまった部分があります。もう少し時間をかけて、より多くの仲介業者から情報を集め、その対応や専門性を慎重に比較検討できれば良かったかもしれません。
譲渡先の探索範囲に関しても、今回は地元の同じ県内の医療法人の中で探しました。しかし、もし時間的な余裕や心の余裕があれば、全国展開しているような、特に新しい医療法人との連携も一つの選択肢として検討できたと思います。そうすることで、クリニックの価値をより高く評価してくれる先が見つかった可能性もあったかもしれません。
さらに、父とは、クリニックの営業や引き際、M&Aや譲渡といったことについて、事前に話し合う機会があまりありませんでした。直前になってからの話だったので、私自身もきちんと想定ができていなかったところはあります。もっと早くから話し合い、準備を進めていれば、異なる結末もあったかもしれません。
父は元気なうちはできるだけクリニックを続けたいという強い思いがあり、実際に最期まで働くことを喜びとしていたので、その点では良かったと思っています。しかし、もしもう少し早くから承継について考えていれば、父の「第二の人生」の楽しみ方についても、もっと様々な選択肢を考えることができたのではないか、と思うこともありますね。
後悔というよりも、「時間がもっとあれば、もっと様々な可能性を探れたのに」という思いが強いです。父がもう働けなくなってしまったという緊急性があり、半年という短い期間で契約締結に至る必要があったため、かなりスピーディーに進めるしかありませんでした。ただ、その中でも、父の思い入れのある地域に根差したクリニックの方針を損なわないことや、今まで雇用していた看護師さんや事務スタッフ、薬剤師などの雇用を守ることは最低限実現したいと考えていたので、その点は良かったと思っています。
SAコーポレーション
12年クリニック運営を経験し、その後M&Aを行った宮﨑医師が、自分自身の経験をもとに、「医師が満足できる、幸せになれる医業承継を実現したい」とSAコーポレーションを設立。
十分な準備期間を経て、クリニックの価値を上げたうえで行うM&Aを提唱し、その情報発信やサポートを行っています。

SAコーポレーション
成功できるような準備が必要
クリニックの承継は、院長が引退を考え始めたときだけでなく、不測の事態によって突然現実的な問題となる場合があります。その時になって慌てることのないよう、早い段階から様々な選択肢を考え、準備しておくことが重要です。
株式会社SAコーポレーションは、「医師が満足でき、幸せになれる医業承継を実現したい」という理念のもと設立されました。M&Aは「終わり」ではなく、「次の医療を育てる」前向きな選択肢となり得ます。そして、もしM&Aという選択肢を選ぶことになった場合、理想の買い手と巡り合うためには、タイミングではなく「準備」がすべてと断言できます。
譲渡の検討を始める前に、診療や組織、収支を整え、クリニックの価値を高めておくという「イグジット経営」の考え方を提唱しています。3年という戦略的な準備期間を設けることで、クリニックは「売られた」のではなく、「望まれる」存在になります。
長年築き上げてきた医療と地域への思いが、未来へとつながっていくように、まずは一歩踏み出し、ご自身のクリニックの未来について考えてみませんか。