相談から承継完了までの平均期間と流れ
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この記事でわかること
- 医業M&Aの標準的な進行フローと必要な手続き
- 医業M&Aが長期化しやすい要因とその対処法
- 承継を成功させるために必要な準備期間と逆算思考
- 家族・スタッフ・患者の理解を得るための工夫とポイント
医業M&Aの全体フロー
医業M&Aの標準的な進行ステップ
医業M&Aでは、独特の事情を踏まえたプロセスが求められます。一般的な進行ステップは以下のとおりです。
- 現状把握(財務状況、診療体制、地域医療ニーズなど)
- 評価(譲渡価格の算定や譲渡条件の整理)
- 候補探し(医療法人や個人医師など買い手候補の選定)
- 条件交渉(診療方針、スタッフ雇用、譲渡価格など)
- 契約締結
- 引き継ぎ(運営、患者対応、スタッフ体制など)
これらは一律の流れではなく、案件ごとにさまざまな調整が加わります。
一般企業M&Aとの違い
一般企業M&Aとは異なり、医業M&Aでは医療機関特有の許認可手続き(保健所など)が必須である点が大きな違いです。さらに、医療機関は地域住民の健康を担うという公共性を持つため、患者やスタッフへの影響も慎重に考慮する必要があります。
医業M&Aを単なる事業譲渡と捉えず、「地域医療を守る承継」という視点を持って進めることが求められます。
何が長期化しやすいポイントか
医業M&Aが長期化する要因としては、まず「候補探し」でマッチする相手がなかなか見つからないことが挙げられます。また、「条件交渉」では診療方針やスタッフの雇用継続、譲渡価格などで齟齬が発生する場合もあります。
保健所対応などの行政手続きも時間を要するケースが多く、結果的に全体のスケジュールが延びてしまいます。これらを想定した柔軟な設計と早期の準備が必要です。
平均的な期間と各ステージの要点
全体でどれくらいかかるのが一般的か
医業M&A全体の所要期間は、平均すると1年半~2年程度が一般的とされます(※)。スムーズに進んだとしても半年~1年は必要であり、これは関係者の合意形成や行政手続きの特性を踏まえると妥当なラインだといえるでしょう。
すでに買い手の候補が見つかっている場合は、比較的短期間でまとまることもあります。
初期相談〜候補探し
この段階では、現状把握と資料の整理、条件設定が重要です。
準備不足のまま候補探しに入ると、買い手からの問い合わせ対応が滞ったり、思うように交渉が進まなかったりする要因になります。専門家の伴走支援を受けながら、あらかじめ情報を整理しておくことが時間短縮につながります。
候補決定〜条件交渉・DD
候補が決まれば、条件交渉とデューデリジェンス(DD:財務、法務、診療体制などの精査と評価)に進みます。
このプロセスでは数カ月~半年程度かかるのが一般的で(※)、そこでの丁寧な対応が信頼関係の構築につながります。医療機関の場合は、許認可や保険医療機関指定など法的な対応が多いため、医業特有の視点からのチェックが重要になります。
契約後の引継ぎ期間
契約締結後も、実際の承継に向けた引き継ぎ期間を要します。
スタッフとの関係構築や患者への説明など、丁寧な周知が求められます。前院長が一定期間残って支援するパターンも多く、平均的には3~6カ月が目安です(※)。ここを疎かにすると、承継後の不安が拡大するリスクがあります。
承継に失敗しないための
“逆算思考”
引退したい時期から逆算する
クリニックの承継は、思い立てばすぐにできるというものではありません。たとえば「65歳でリタイアしたい」と考えている場合、少なくとも3年前、理想としては5年前から準備を始めるべきです。候補探しや条件交渉、引き継ぎ期間を含めると、それだけの時間がかかると心得ておきましょう。
思い立ってから動き出すのではなく、「いつまでにどうなっていたいか」から逆算してスケジュールを組むことが大切です。
売却額を最大化するために必要な期間
譲渡額を少しでも高くしたいなら、事前の準備は欠かせません。
たとえば、財務内容の見直しや赤字部門の改善、診療報酬請求の適正化、経営資料の準備などは年単位の取り組みです。これらが整っていれば、買い手にとっての安心材料になり、結果的に好条件での交渉が可能になります。
急いで売却を進めようとすると、買い手にとってハイリスクに見えるため、譲渡額が下がるケースもあります。
家族・スタッフの気持ちを整理する時間
クリニックの承継には、周囲の理解と協力も必要です。特に家族やスタッフにとって、クリニックの売却・引退は大きな出来事です。突然の話は動揺や不信感を招きやすいため、事前に納得感や心構えを醸成する時間が求められます。信頼関係を保ちながら計画を進めていくためにも、一定の調整期間を設けることが大切です。
よくある遅延パターンと
その回避法
候補者が見つからない
医業M&Aでもっとも多い遅延の一因は、「そもそも買い手候補が見つからない」という事態です。特に、医療業界に不慣れな仲介業者に任せてしまうと適切なマッチングが行なわれず、時間だけが過ぎてしまうことがあります。こうしたケースでは、医業M&Aに特化した実績ある仲介業者を活用すべきです。
また、候補者に選ばれるためには、自院の強みや魅力を事前に整理し、伝わる形で打ち出す工夫も大切です。
条件交渉がこじれる
譲渡額や引き継ぎ方法などの条件面で折り合わず、交渉が停滞するケースも少なくありません。こうした事態を避けるためには、まず売り手が希望条件を事前に整理しておくことが必要です。
そして交渉の場面では感情的にならず、第三者である仲介業者やアドバイザーを通じて冷静に進めることがトラブル回避につながります。医業M&Aに詳しい専門家を挟めば、スムーズな合意形成が期待できるでしょう。
スタッフ・患者の反発
承継が近づくと、スタッフや患者の間に不安が広がり、反発が起きることもあります。特に「突然の発表」で信頼を損なうことが多いため、タイミングを見て段階的に伝えることが肝心です。
承継が決まったら、スタッフにはできるだけ早く意図を説明し、今後の体制や雇用の安定について丁寧に話すことで理解を得ます。患者に対しては、医療の継続性が保たれる旨をしっかり伝えることが安心感につながります。
理想は準備期間最低3年
なぜ3年以上かけると成功しやすいのか
医業M&Aを成功させる上で、「3年以上の準備期間を設けること」は非常に重要です。
長期間の準備を通じて、自院の経営状態や魅力を見直す時間を確保でき、結果として買い手候補の幅も広がります。時間的余裕があれば、患者やスタッフにも十分に配慮できます。信頼関係を維持する意味でも、早期の準備開始が成功のカギとなるでしょう。
3年間のステップ例
3年間の準備期間は、以下のような段階を意識すると進めやすくなります。
- 1年目・2年目
現状把握と経営改善に注力し、財務状況の見直しやスタッフ体制の安定化などに取り組みます。
さらに、仲介会社との連携を開始し、買い手候補の探索と交渉の事前準備に取り組みます。候補者との初期面談なども含まれます。 - 3年目
実際の交渉と契約、そして円滑な引き継ぎへと進めていきます。最終譲渡成立後は速やかにスタッフへの開示や説明、その後で患者への告知を行なうのが理想です。
このようにステップを分けて取り組むことで、M&Aの成功率と満足度が大きく高まります。
「準備の進め方」はイグジット経営で学ぶ
「いつかは引退」と構えていても、準備が遅れると選択肢が限られてしまいます。「何を」「どの順で」進めるべきかを事前に理解して動き出すことが肝要です。
このような進め方は、「イグジット経営」の考え方を学ぶことで体系的に整理できます。計画的に動ける人ほど理想的な条件での売却が可能になり、結果として患者やスタッフの安心感にもつながるのです。
医業M&Aは平均1年半〜2年と長期にわたるプロセスです。買い手探しや条件交渉、許認可対応など、通常のM&Aとは異なる複雑さを伴います。成功の鍵は「逆算思考」による早期準備であり、理想的には3年以上の期間をかけて、財務改善や周囲との信頼構築を進めることが重要です。家族やスタッフへの配慮も欠かせず、慎重かつ計画的な進行が円滑な承継の第一歩となります。

SAコーポレーション
12年クリニック運営を経験し、その後M&Aを行った宮﨑医師が、自分自身の経験をもとに、「医師が満足できる、幸せになれる医業承継を実現したい」とSAコーポレーションを設立。
十分な準備期間を経て、クリニックの価値を上げたうえで行うM&Aを提唱し、その情報発信やサポートを行っています。
