医業M&Aとは?仕組みと基本ステップ
当サイトは株式会社SAコーポレーションをスポンサーとしてZenken株式会社が運営しています。
この記事でわかること
- 医業M&Aとは何か、一般企業のM&Aとの違い
- 親族承継と第三者承継の2つの型
- 医業M&Aが発生するタイミングと背景
- M&Aの進行ステップとよくある誤解
医業M&Aとは?
一般企業と何が違うのか
そもそもM&Aとは何か
M&Aとは「Mergers and Acquisitions(合併と買収)」の略で、個人や法人が事業を他の個人や法人に引き継ぐ経営手法です。事業譲渡や株式譲渡といった形で実施され、事業の継続性を保ちながら引退や撤退を可能にする“出口戦略”として、多くの業界で活用されています。
医療業界では、「親族に医師がいない」「患者やスタッフを守りたい」「地域医療を維持させたい」といった理由から、M&Aによる第三者承継を選択するケースが増えています。
医業M&A特有のポイント
医業M&Aには、医療業界ならではの事情があります。
まず、診療所の開設・承継には都道府県知事の認可が必要で、医師が管理者であることが条件です。医業は地域に根差したサービスであり、診療の継続性、患者やスタッフとの信頼関係への配慮も不可欠です。
譲渡価格や条件だけではなく、医師としての使命感や継承後の方針までを含めた、誠実な引き継ぎが求められます。
企業M&Aと何がどう違うのか
一般企業のM&Aは、収益性や市場シェアなどが重視され、通常は利益追求が大きな動機となります。
一方、医業は事業の公共性や倫理性が高く、M&Aでは財務面以外の要素も重視されます。
たとえば、「診療科を変えない」「スタッフの継続雇用」「地域医療を守る」といった、社会的責任も果たす必要があります。
また、医業は院長個人の影響力が大きく、人格や理念が承継の成否に直結するといっても過言ではありません。
よくある医業M&Aの2つの型
(親族承継/第三者承継)
親族承継とはどんな形か
親族承継とは、院長の子どもなど親族が医院を引き継ぐスタイルです。本来ならより一般的な方法で、特に地方では二代、三代と続く医院も多くありました。理念や地域との関係性を自然に継承できるため、患者も地域住民も安心感を得られます。
しかし、近年は子世代や親族が医師にならないケースや、都市部への移住志向の高まりもあって、親族内での承継が難しくなっています。
第三者承継とは?最近増えている理由
第三者承継は、親族以外の医師や医療法人に医院を引き継ぐ方法です。近年は大手医療法人やさまざまな医療ネットワークによるM&Aが増えており、診療の質や規模を維持しながら経営を安定させる手段として定着しつつあります。
診療体制の引き継ぎやスタッフの同意形成が第三者承継を成功させるカギになりますが、外部のサポートを得ることで持続可能な医療の形が見えてくるでしょう。
どちらが向いている?選び方のヒント
親族承継か第三者承継か、その判断には家族構成や地域性、患者層といった複合的な要素の検討が必要です。
地域密着型で高齢の患者が多い医院では、家族的な雰囲気を引き継げる親族承継が向いているでしょう。
一方、親族承継が難しいケースをはじめ、経営改善や医療体制の強化を求めるなら、第三者承継による新たな視点の導入が有効といえます。子どもに無理に継がせたくないと考える院長も多く、本人や家族、スタッフ、患者、それぞれの立場を尊重した柔軟な選択が重要です。
M&Aが発生するタイミング・背景
どんなときにM&Aが選ばれるのか
多くの場合、医業M&Aは「後継者の不在」「経営面の不安」といった事情から検討されます。院長の高齢化や病気をきっかけに、医院の将来を考え始めるケースも少なくありません。
また、「患者やスタッフに迷惑をかけたくない」という責任感から承継を検討するケースもあります。親族承継が難しい時代において、M&Aは廃業を避ける有力な選択肢だといえます。
実際に多い相談のきっかけ
実際の相談のきっかけとしては、以下のような声が多く聞かれます。
- 「そろそろ引退を考えているが、どうすべきかわからない」
- 「銀行や税理士からM&Aを勧められた」
- 「仲介業者に案内された」
また、以下のような背景から、相談に至ることもあります。
- 知り合いの開業医がM&Aで医院を継承した。
- スタッフの将来を考えて早めに動きたい。
これらに共通しているのは、「きっかけさえあれば、M&Aの検討を始められる」ということです。
検討を先送りするとどうなる?
M&Aの検討を先送りすると、突然の体調悪化などで医院の閉鎖を余儀なくされるかもしれません。
結果として地域の患者は医療機関を失い、スタッフは職を失ってしまいます。さらに、廃業には不動産の原状回復や医療機器の処分、各種契約の精算といったコストも発生し、大きな経済的負担となります。
余裕のあるうちに検討を始めておくことで、柔軟な選択肢が生まれます。
M&Aの進行ステップ
短期でのM&Aは準備不足のリスクも
院長の急病など、やむを得ない理由から短期間でM&Aを進めるケースもあります。しかし、このような突発的なM&Aにはリスクも伴います。
情報整理や条件のすり合わせが不十分だと、買い手の候補が限られるほか、希望価格を下回る譲渡になる可能性があります。患者やスタッフへの説明不足も、診療の継続に悪影響を及ぼしかねません。
したがって、短期間のM&Aであればなおのこと、信頼できる仲介者のサポートが不可欠になります。
イグジット経営としての計画的M&A
一方、近年増えているのが「イグジット経営」としての計画的M&Aです。
これは数年単位で承継を見据え、組織体制や診療内容、財務状況などを整備した上で進めるスタイルです。
一般的なM&Aの流れ
医業M&Aは、一般的に以下のステップを経て進行します。
- まずは現状の診療内容や財務状況を整理し、どのような相手に引き継ぎたいのかを明確にします。
- その後、適切な相手を探し、条件交渉を行なった上で基本合意・契約締結へと進みます。
- 契約後には、実際の診療や経営の引き継ぎ、患者やスタッフへの説明といったフェーズが控えています。
いずれの段階でも重要なのは、「情報の透明性」と「信頼関係の構築」です。
よくある誤解とその現実
「M&Aは大きな病院だけの話?」
医業M&Aと聞くと、「大規模な病院や法人の話では?」と感じる方も多いかもしれません。しかし、実際には地域密着型の小規模クリニックもM&Aの主な対象になっているのです。なぜなら、個人開業医の高齢化が進んでも、「診療を続けてほしい」という地域からのニーズは非常に高いからです。
また、小規模であっても安定した患者基盤やスタッフを抱えている医院には、高い引き継ぎ価値があります。小規模ならではのフットワークの軽さや柔軟性を評価されるケースも少なくありません。
「M&Aは裏切りなのでは?」
「医院を売るのは患者やスタッフへの裏切りでは?」と悩む開業医もいます。しかし、実際はその逆です。無理に続けて突然閉院するほうが、患者にもスタッフにも大きな負担をかけるはずです。
医業M&Aは、診療を止めずに地域医療を継続させるための前向きな選択肢です。丁寧な準備を重ねた承継は、患者の不安を最小限に抑え、スタッフの雇用も守れます。「守るための承継」と捉えることで、院長自身も納得できる判断をしやすくなるでしょう。
「患者が離れるのが心配…」
「M&Aによって患者が離れてしまうのでは?」という不安はよく聞かれます。確かに、引き継ぎが不十分な場合は混乱が生じることもありますが、綿密な準備と誠実なコミュニケーションがあれば患者の離脱は防げます。
たとえば、承継前と同じスタッフが勤務を続けることや、診療内容や診療時間をできる限り変えないことで、患者の不安を取り除けます。また、あらかじめ丁寧に説明しておけば「院長が信頼する相手に引き継ぐのだ」と伝わり、患者からも理解を得られるでしょう。
医業M&Aは、一般企業と異なり、事業の公共性や倫理性が重視される承継手法です。親族承継が難しい時代において、第三者承継はクリニックの廃業を避け、患者やスタッフを守りながら地域医療を継続させるための有効な選択肢です。円滑な承継を実現するためには、早期の計画立案と、誠実な引き継ぎが重要となります。

SAコーポレーション
12年クリニック運営を経験し、その後M&Aを行った宮﨑医師が、自分自身の経験をもとに、「医師が満足できる、幸せになれる医業承継を実現したい」とSAコーポレーションを設立。
十分な準備期間を経て、クリニックの価値を上げたうえで行うM&Aを提唱し、その情報発信やサポートを行っています。
