首都圏エリアの医療M&A支援情報
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この記事でわかること
- 東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県における医業承継の現状と地域特性
- 各自治体・医師会・専門機関による医業M&A支援制度や相談窓口
- 実際の承継・M&A事例から見る成功のポイント
- 首都圏で承継を進める際の注意点と成功のための対策
東京都
東京都の医業承継の現状
東京都は全国でも医療機関が多いエリアですが、その開業医の高齢化も進んでいます。
厚生労働省の「医療施設調査」(※1)によると、東京都の医療施設数は26,139施設、開業医(一般診療所・歯科診療所)だけでも25,502施設にのぼります(2023年10月1日時点)。
全国の開業医(一般診療所)の医師の平均年齢は2022年時点で60歳を超えており(※2)、東京都においても後継者不在の課題が年々深刻化しています。
「人口が多いから後継者も見つかるだろう」と考えがちですが、都心部特有の地価の高さや、若手医師の勤務医志向などから、開業のハードルが高いと感じる医師も少なくありません。
このため、計画的な承継準備や、第三者へのM&Aを検討することが非常に重要になっています。
行政・医師会・民間で使える制度や支援
東京都医師会による継承支援セミナー
東京都医師会は、第三者承継をテーマにした医業継承セミナーを開催しており、体験談や専門家の個別相談も提供しています。2025年は3月と9月に開催しました。 また、医業承継に関する相談全般を受け付けており、M&A専門会社など専門家との連携も行っています。
東京都事業承継・引継ぎ支援センター
東京商工会議所が運営する公的支援機関で、第三者承継や従業員承継についての無料相談や専門家紹介が利用できます。
民間M&A仲介サービスの支援体制
- 医業M&A仲介会社
専門の仲介会社は、買い手候補の選定から交渉、契約手続きまでを一貫してサポートしてくれます。多くの会社が東京都内でのM&A実績を持っています。医業承継に特化した支援サービスでは、相談・マッチング・譲渡後のフォローも提供されており、都内でも利便性高く利用可能です。 - 税理士事務所・弁護士事務所
医業に特化した税務・法務の専門家も、承継スキームの構築やデューデリジェンス(資産査定)など、M&Aの各段階で重要な役割を果たします。
東京都の承継・M&A事例.1
- エリア:東京都江戸川区
- クリニック概要:開業後20年以上の診療実績を持つ小児科クリニック
第三者承継を検討した経緯
- 以前から勇退の時期として目標としていた節目の65歳が目前になった。
- 紙カルテを使っていたが、医療DXの進展、デジタル化の波が迫ってきた。
- 閉院の意思も強いが、これまでクリニックを頼りにしてきた多くの患者さんのためにもこの場所を残すことで地域医療の継続に貢献したい。
承継にあたっての課題・懸念点
- 閉院まで4~5ヶ月と期間が短い。
- クリニックの立地が最寄り駅から離れている。
- 紙カルテを使用していたため、承継後に電子カルテ導入のコストが発生する。
成約の経緯・決め手
- 分院展開を目標に「地域密着型」のクリニックも継承検討対象としている医療法人が後継者として見つかった。
- 後継者となる医療法人側で管理医師の採用の目途が立った。
- 短期間の継承をスムーズに進めるため譲渡価格を低額に設定、後継者が電子カルテ導入コストへの見通しが立てられた。
東京都の承継・M&A事例.2
- エリア:東京都
- クリニック概要:運営年数17年の皮膚科・美容皮膚科クリニック
第三者承継を検討した経緯
- 院長は60歳の女性医師。自身の体調不良や家族の介護などを理由に、医業承継を決心した。
- 身内から後継者を探したが、見つからなかった。
- 医業承継の譲渡先として、専門医の資格があり美容皮膚科診療の経験もある個人の女性医師を探すことにした。
承継にあたっての課題・懸念点
- 個人の女性医師・専門医資格・美容経験といった条件により、なかなか譲渡先が見つからない。
- 1人の女性医師と面談までこぎつけたが、譲渡価格で同意を得られず破談になってしまった。
- 個人だけではなく法人も譲渡先の検討対象にした。
成約の経緯・決め手
- 分院開院を検討中の医療法人に出会い、マッチングに成功。
- 候補先は「人材を確保しやすい」「医療法人の理事長の自宅が都内にある」という2点から、都内のクリニックを探していた。
- 「3つの沿線が揃う好立地な条件」「開業から17年経っているが、内装がきれい」という点も魅力となり、無事に承継できた。
東京都エリアで承継を進めるときの
注意点
東京都で医業承継を成功させるためには、地域特有の事情を理解しておくことが重要です。
多様なニーズ、かつ、高水準の都市型市場
地域特性に合った差別化(診療内容、スタイル、設備など)が求められます。
都内には、様々な診療スタイルや患者層が存在します。譲渡する側の医院の特性(専門性、立地、患者層など)を正確に分析し、それに合った買い手を見つける必要があります。
承継構想の“見える化”が不可欠
買い手側も、都内での開業には大きな初期投資が必要です。そのため、譲渡する側の医院の収益性や将来性が明確な事業計画として提示されていることが、M&A成立の鍵となります。 病床機能・診療方針・患者層を整理して、買い手にとって魅力的な情報として提示する必要があります。
スムーズな引継ぎ
都心部では患者さんの情報感度も高く、院長交代が知られると患者離れのリスクも高まります。引継ぎ期間を十分に確保し、新院長との共同診療期間を設けるなど、患者さんが安心して通い続けられるような工夫が求められます。
専門家と連携した丁寧な交渉設計が成功の鍵
譲渡先との条件調整や税務・法務の検討を専門家と協働で進めることが、安全かつ円滑な承継につながります。
まずは誰に相談すべきか?
医業承継の第一歩は、現状を客観的に把握し、選択肢を整理することです。
「うちの医院はM&Aに向いているのか?」 「相談料はかかるのか?」
――といった疑問をお持ちの場合は、まずは医業承継に特化した専門家に相談することをお勧めします。多くの専門家は無料相談を受け付けているので、まずは話を聞いてみることから始めましょう。
相談先の例
- 医業M&A仲介会社
買い手探しから手続きまで、ワンストップでサポートしてくれます。 - 東京都医師会の承継支援窓口
中立的な立場で、適切なアドバイスや専門家との連携を支援してくれます。
神奈川県
神奈川県の医業承継の現状
神奈川県は、東京都に次ぐ全国第2位の人口を抱える大都市圏であり、多くの医療機関が存在します。厚生労働省の「医療施設調査」によると、神奈川県の病院・診療所数は約12,383施設(※1)。開業医(一般診療所・歯科診療所)だけでも12,049施設にのぼります(2023年10月1日時点)。
全国の開業医(一般診療所)の医師の平均年齢は2022年時点で60歳を超えており(※2)、神奈川県においても、後継者不在の問題は他人事ではありません。特に、都心部に隣接する横浜市や川崎市といった大都市エリアと、自然豊かな湘南エリアや県西部のエリアでは、地域ごとの医療ニーズや医師の働き方が異なります。そのため、それぞれの地域特性を理解したうえで、計画的に医業承継を進めることが重要です。 郊外や山間地域では医院数が限られ、後継者未定の問題はより深刻化していると考えられます。
行政・医師会・民間で使える制度や支援
神奈川県で医業承継を検討する際に、利用できる主な支援制度や相談窓口をご紹介します。
神奈川県医師会による承継相談窓口
神奈川県医師会は「承継を考える診療所」の相談窓口を設置し、専門家紹介やセミナーを通して支援を行っています。医業承継に関する相談全般を受け付けており、M&A専門会社など専門家との連携も行っています。
神奈川県事業承継・引継ぎ支援センター
神奈川県事業承継・引継ぎ支援センターを通じて金融機関や専門家と連携し、承継支援や融資相談を受けられる仕組みがあります。
神奈川県中小企業診断協会 医業承継支援
医療機関の経営に詳しい中小企業診断士が、事業承継に関する相談に対応しています。
民間M&A仲介・マッチングサービス
- 医業M&A仲介会社
専門の仲介会社は、買い手候補の選定から交渉、契約手続きまでを一貫してサポートしてくれます。多くの会社が神奈川県内でのM&A実績を持っています。 - 税理士事務所・弁護士事務所
医業に特化した税務・法務の専門家も、承継スキームの構築やデューデリジェンス(資産査定)など、M&Aの各段階で重要な役割を果たします。
神奈川県の承継・M&A事例.1
- エリア:神奈川県秦野市
- クリニック概要:1986年開業の内科・小児科・皮膚科クリニック
第三者承継を検討した経緯
- 77歳での勇退を検討しており、医療現場に若く新しい医師を迎えるべきだと考えていた
承継にあたっての課題・懸念点
- 医業承継に関する知識が乏しく、手探り状態で進行しなければならない
成約の経緯・決め手
- 承継先となる医師は泌尿器科出身。新規開業を検討していたが、自己資金などの面からビル診が妥当。しかし、制約の少ない環境で診療を行いたかったため、事業承継を選択
- クリニックの集患数や医業収益は十分であり、承継後の経営の安定性が期待できる
- 承継者である医師の実家からクリニックが比較的近いことも好印象となった
神奈川県の承継・M&A事例.2
- エリア:神奈川県川崎市
- クリニック概要:好立地にある内科クリニック
第三者承継を検討した経緯
- 介護や結婚で退職する職員が相次ぎ、採用や教育に課題が生じていた。
- 日々の診療と労務管理に疲労が溜まり、医業承継を検討し始める。
- 「診療と労務管理の並行は辞めたいが、診療自体は継続できそうだ」といった状態であることから、医療法人の傘下に入って分院長として継続勤務をすることに。
承継にあたっての課題・懸念点
- クリニックの労務を含めた職員マネジメント体制の構築が必要。
- 「経営は手放すが、診療は続ける」というケースのため、院長は承継後も勤務希望。
成約の経緯・決め手
- 院長と候補先の理事長の診療理念が一致し、分院長としての勤務を了承してもらえた。
- 候補先である医療法人のバックオフィス体制が整っており、スタッフサポートが充実しているため、分院長として安心して働ける点も魅力。
神奈川県エリアで承継を進めるときの
注意点
神奈川県で医業承継を成功させるためには、地域特有の事情を理解しておくことが重要です。
地域差を把握することが前提
横浜市・川崎市といった大都市部と、その他の地域では、医療ニーズや患者層が大きく異なります。医院が立地するエリアの特性を正確に分析し、それに合った買い手を見つける必要があります。
都市部は選択肢が多い反面競合も激しく、郊外は患者は多く見込めるが後継者が限られる、という構造があります。
競合性の高さと柔軟な条件設定
医療機関が多いエリアでは、競合となる医院も多く存在します。承継後の経営を安定させるため、診療圏の特性や競合との差別化ポイントを明確にしておくことが大切です。
M&Aでは、希望する条件を最初から絞りすぎないことが成功の鍵となります。地域によっては、柔軟な条件設定がスムーズな承継につながることがあります。
医師会や仲介との関係構築が成功の要
地元の医師会支部や信頼できるM&A支援事業者と早期に接点を作ることで、承継の可能性が大きく広がります。
まずは誰に相談すべきか?
医業承継の第一歩は、現状を客観的に把握し、選択肢を整理することです。
「うちの医院はM&Aに向いているのか?」「具体的に何から始めればいいのだろう?」
このような疑問をお持ちの場合は、まずは医業承継に特化した専門家に相談することをお勧めします。多くの専門家は無料相談を受け付けているので、まずは話を聞いてみることから始めましょう。
相談先の一例
- 医業M&A仲介会社
買い手探しから手続きまで、ワンストップでサポートしてくれます。 - 神奈川県医師会の承継支援窓口
中立的な立場で、適切なアドバイスや専門家との連携を支援してくれます。
千葉県
千葉県の医業承継の現状
千葉県は、東京のベッドタウンとして人口増加が続くエリアであり、多くの医療機関が存在しています。
厚生労働省の「医療施設調査」(※1)によると、千葉県の医療施設数は7,433施設、開業医(一般診療所・歯科診療所)だけでも7,144施設にのぼります(2023年10月1日時点)。
全国の開業医(一般診療所)の医師の平均年齢は2022年時点で60歳を超えており(※2)、千葉県においても開業医の高齢化は深刻な課題となっており、後継者不在の問題は他人事ではありません。
都市部と郊外・農村地域が共存しており、地域によって承継環境が大きく異なります。特に、都市部(千葉市、船橋市、松戸市など)は診療所数が多く競合も多い一方、郊外や房総地域では医療資源が限られ、1院が地域医療を支える重要な存在です。地域ごとの特性を理解し、将来を見据えた医業承継の準備を進めることが重要です。
また、患者の高齢化率は県全体で約28%(※2025年推計)と全国平均をやや上回っており、慢性疾患や在宅診療のニーズが高まっています。
行政・医師会・民間で使える制度や支援
千葉県で医業承継を検討する際に、利用できる主な支援制度や相談窓口をご紹介します。
千葉県医師会
千葉県医師会には、医業承継支援を専門に行う窓口は直接的には存在しませんが、千葉県診療所承継支援事業補助制度への協力を行っています。
千葉県事業承継・引継ぎ支援センター
事業承継に関する相談窓口として、医業承継に関する相談全般を受け付けており、M&A専門会社など専門家との連携も行っています。
【千葉県】重点医師偏在対策支援区域における診療所の承継・開業支援事業
一定の定住人口が見込まれるものの、必要な医師を確保できず、人口減少よりも医療機関の減少のスピードの方が早い地域を重点医師偏在対策支援区域(山武長生夷隅医療圏及び君津医療圏)に設定し、その地域で診療所(医科)を承継・開業する予定の方に助成支援を行っています。
【千葉県】診療所承継支援事業
地域の医療提供体制の維持・強化を図る目的で、地域医療を担う意欲のある医師に対して、診療所の承継にかかる経費の一部を助成しています。
民間企業による支援
- 医業M&A仲介会社
専門の仲介会社は、買い手候補の選定から交渉、契約手続きまでを一貫してサポートしてくれます。多くの会社が千葉県内でのM&A実績を持っています。 - 税理士事務所・弁護士事務所
医業に特化した税務・法務の専門家も、承継スキームの構築やデューデリジェンス(資産査定)など、M&Aの各段階で重要な役割を果たします。
千葉県の承継・M&A事例.1
- エリア:千葉県北西部
- クリニック概要:1995年に開院した、駅チカ大型商業モール内にある内科クリニック
第三者承継を検討した経緯
- 院長は70代後半であり、体力や集中力の低下を自覚しているため、診療判断に精神的な負担を感じていた。
- 電子カルテといった医療DX対応をしてまで経営を継続する意欲がない。
- そろそろ勇退したいので、閉院を検討。そんな時、知人から第三者承継について聞いた。
- 親族内にクリニックを継げる人がいないため、第三者承継のための後継者探しを開始。
承継にあたっての課題・懸念点
- 院長やスタッフの高齢化が進んでおり、医療DX化をしていない。
- 「同門の後輩に継いでもらいたい」という院長の希望がある。
成約の経緯・決め手
- クリニックは駅に直結した商業モール内という好立地にあり、集患力に優れている部分が魅力。
- 内視鏡検査も行う内科クリニックであり、診療体制が充実。売上基盤もしっかりとしている。
- 院長の希望である「同門の後輩医師」が見つかり、希望時期での譲渡に同意してもらえた。
- 長期にわたって雇用していたスタッフもそのまま勤務できることになった。
千葉県の承継・M&A事例.2
- エリア:千葉県北西部
- クリニック概要:幅広い小児医療を提供する、法人開設の小児科クリニック
第三者承継を検討した経緯
- 院長が退職を申し出たため、運営している医療法人が後継者探しを検討。
- クリニックは地域に愛されており、患者数が多い。地域の小児科医療を継続するためにも、閉院は避けたい。
承継にあたっての課題・懸念点
- 院長の退職が迫っているため、早期の承継が必要。
- 2診以上が可能なクリニックであり、規模感が大きい。また、小児科管理医師を雇用するという点がネックとなり、後継する医療法人がなかなか見つからない。
成約の経緯・決め手
- 承継時、クリニックは開業から5年ほど。内装や機器は美麗なうえ、売上1.4億円以上と超盛業中で魅力的。
- 後継する医療法人もスピーディな承継を希望しており、小児科管理医師の雇用活動を熱心に行ってくれた。
- 売主と買い手の面談・現地での打ち合わせを複数回行ったうえ、承継後に管理医師として就任予定の医師もクリニックを見学。承継後の運営・診療イメージが湧きやすかった。
千葉県エリアで承継を進めるときの
注意点
千葉県で医業承継を成功させるためには、地域特有の事情を理解し、診療圏の特性や競合との差別化ポイントを明確にしておくことが大切です。
「地域の医療需要」の把握
ベッドタウンとしての都心近郊エリアと、過疎化が進む沿岸部や内陸部では、医療ニーズや患者層が大きく異なります。医院が立地するエリアの特性を正確に分析し、それに合った買い手を見つける必要があります。
将来性の明確化
継承希望者にとっては、患者層・来院数・競合状況などが意思決定の判断材料になります。データや診療実績を整理し、将来性を示せることが重要です。特に、人口減少が見込まれる地域では、今後の医療需要の変化も考慮に入れる必要があります。
インフラ(建物・設備)の維持コストも視野に
古い建物・設備の場合は、引継ぎ後のリフォーム・設備更新費が懸念されるため、必要な投資を事前に見積もっておくと良いでしょう。 医療機器のリース契約・保守体制も整理が必要です。
地域コミュニティとの関係性
かかりつけ医として長く強い信頼関係を結んでいた患者や高齢の患者が多い場合、急な交代では不安を招くことが少なくありません。承継前後で院長交代を丁寧にアナウンスする体制が求められます。
まずは誰に相談すべきか?
医業承継の第一歩は、現状を客観的に把握し、選択肢を整理することです。
「自分の医院はM&Aに向いているのか?」「相談料はかかるのだろうか?」
――といった疑問をお持ちの場合は、まずは医業承継に特化した専門家に相談することをおすすめします。多くの専門家は無料相談を受け付けているので、まずは話を聞いてみることから始めましょう。
相談先の一例
- 医業M&A仲介会社
買い手探しから手続きまで、ワンストップでサポートしてくれます。 - 千葉県医師会、千葉県事業承継・引継ぎ支援センター
中立的な立場で、適切なアドバイスや専門家との連携を支援してくれます。
埼玉県
埼玉県の医業承継の現状
厚生労働省の「医療施設調査」(※1)によると、埼玉県の医療施設数は8,382施設、開業医(一般診療所・歯科診療所)だけでも8,040施設にのぼります(2023年10月1日時点)。
全国の開業医(一般診療所)の医師の平均年齢は2022年時点で60歳を超えており(※2)、埼玉県全体の開業医の高齢化率も上昇傾向にあり、特に地方圏では後継者未定の医院が増加しています。
さいたま市など都心部に隣接するエリアには多くの医院が集中する一方、秩父、小鹿野、秩父郡など県北・県西部のエリアでは、医療提供体制が脆弱な地域もあります。 また、患者の高齢化が進む地域ほど地域包括ケアシステムとの連携が重要で、承継の準備にも大きな影響を与えます。
地域ごとの医療ニーズや医師の働き方が異なります。そのため、それぞれの地域特性を理解したうえで、計画的に医業承継を進めることが重要です。
行政・医師会・民間で使える制度や支援
埼玉県医師会
医業経営セミナーを開催し、税理士などを招いて承継事例を紹介するなど、啓発活動や相談窓口としての機能も果たしています。
埼玉県事業承継・引継ぎ支援センター(商工会議所)
医業に特化した支援ではありませんが、事業承継全般のサポートを提供しており、個別相談、簡易株価診断、専門家派遣などが利用可能です。
民間企業による支援
- 医業M&A仲介会社
専門の仲介会社は、買い手候補の選定から交渉、契約手続きまでを一貫してサポートしてくれます。多くの会社が埼玉県内でのM&A実績を持っています。 - 税理士事務所・弁護士事務所
医業に特化した税務・法務の専門家も、承継スキームの構築やデューデリジェンス(資産査定)など、M&Aの各段階で重要な役割を果たします。
埼玉県の承継・M&A事例.1
- エリア:埼玉県吉川市
- クリニック概要:1989年の開院後、地域住民から高い信頼を得てきた整形外科クリニック
第三者承継を検討した経緯
- 開業医のため定年がないものの、70歳を過ぎてから体力的な不安を感じるようになった。
- 閉院することも考えたが、残された患者やスタッフのことを思うと「第三者承継」が適切だと感じた。
- 第三者承継にあたって医業M&A仲介会社に依頼したが、マッチング成功せず。別の医業M&A仲介会社に依頼し、最終的に事業を譲渡できた。
承継にあたっての課題・懸念点
- 承継にあたって特に条件などはないが、「最低でも承継後1年は診療を続け、患者さんとスタッフを守ってほしい」と考えていた。
成約の経緯・決め手
- 医業M&A仲介会社の紹介によって、1人の医師とマッチング。候補先の医師は既に医院を経営しており当該クリニックは分院扱いとなるが、これまでの診療スタイルを変えずに踏襲。患者さんやスタッフの信頼獲得につながった。
- 後継者となる医師が、前院長の医療提供に対する考えや姿勢に共感した。
- 前院長が患者さんに声掛けを行っていたこともあり、承継後も安定した売上を確保できた。
埼玉県の承継・M&A事例.2
- エリア:埼玉県南東部
- クリニック概要:約30年の診療実績をもつ消化器外科・内科クリニック
第三者承継を検討した経緯
- 院長が加齢による気力・体力低下を感じており、後継者がいないため閉院を考えていた。
- しかし、第三者承継について知り、勇退する時期を決めたうえで後継者探しを開始。
承継にあたっての課題・懸念点
- 勇退時期を決めていたことから、後継者探しに期限があった。
- 電子カルテシステムや、隣接する駐車場の賃貸借契約など、承継にあたって整理しなければならない事項が複数あった。
- 院長の気力・体力低下に伴い運営・売り上げが縮小していたことから、後継者を見つけられないのではないかという不安があった。
成約の経緯・決め手
- 一般内科クリニックのニーズが見込める立地にあるうえ、慢性疾患を主訴する患者さんが多かったことから、承継後も安定した売上が見込める。
- 後継者候補が院長の同門であったことで、院長自身の「閉院ではなく、第三者承継承をする」という意思が固まった。
- 後継者候補の配偶者がすでに承継開業を経験しており、承継について理解があった。そのため、意思決定もスムーズに進んだ。
埼玉県エリアで承継を進めるときの
注意点
立地特性に応じた戦略
さいたま市などの都心部と、秩父市などの自然豊かな地域では、医療ニーズや患者層が大きく異なります。医院が立地するエリアの特性を正確に分析し、それに合った買い手を見つけるために、自院の立地特性に応じた戦略が求められます。
スムーズな引継ぎ
医業M&Aでは、患者さんの安心を考慮したスムーズな引継ぎが不可欠です。特にかかりつけ医として機能していたり、高齢の患者がいる場合、承継後の共同診療期間を設けるなど、患者さんが安心して通い続けられるような工夫が求められます。
難易度が高いケースもあり、専門家との連携は必須
埼玉県は都市部と周縁部では承継の難易度が異なります。また、診療科目などの条件によって難易度が高いケースもあります。複雑な手続きや専門的な知識が必要なため、専門家との連携が不可欠です。複数の専門家と相談し、より良好な承継方法を見つけることが成功の鍵となります。
まずは誰に相談すべきか?
医業承継の第一歩は、現状を客観的に把握し、選択肢を整理することです。
「うちの医院はM&Aに向いているのか?」「具体的に何から始めればいいのだろう?」
――といった疑問をお持ちの場合は、まずは医業承継に特化した専門家に相談することをおすすめします。多くの専門家は無料相談を受け付けているので、まずは話を聞いてみることから始めましょう。
相談先の一例
- 医業M&A仲介会社
買い手探しから手続きまで、ワンストップでサポートしてくれます。 - 埼玉県医師会、埼玉県事業承継・引継ぎ支援センター
中立的な立場で、適切なアドバイスや専門家との連携を支援してくれます。
首都圏の医業承継は、地域特性の違いや高齢化、後継者不在など、さまざまな課題を抱えています。一方で、公的支援制度や医師会のセミナー、M&A仲介会社のサポート体制が整っており、第三者承継の選択肢は広がりつつあります。地域別の成功事例に学びながら、柔軟な条件設定や早期の準備が鍵となります。まずは専門家への相談を通じ、地域医療の継続と自院の価値最大化に向けた第一歩を踏み出すことが大切です。

SAコーポレーション
12年クリニック運営を経験し、その後M&Aを行った宮﨑医師が、自分自身の経験をもとに、「医師が満足できる、幸せになれる医業承継を実現したい」とSAコーポレーションを設立。
十分な準備期間を経て、クリニックの価値を上げたうえで行うM&Aを提唱し、その情報発信やサポートを行っています。
