診療科別 承継のポイント
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この記事でわかること
- 診療科によって異なる医業承継の難易度と要因
- 難しい診療科でも承継を成功させるための工夫と準備
- 「診療科×地域×運営体制」による医院評価のポイント
- 各診療科ごとの典型的な課題と対処法の具体例
診療科ごとに異なる
「承継の難易度」とは?
なぜ診療科によって難易度が変わるのか
医業承継において、診療科の違いは承継の難易度に大きく影響します。
たとえば、内科のように地域密着型で患者数も多い診療科は、継続的な収益が見込める反面、院長への属人性が高くなる傾向もみられます。
歯科や美容皮膚科のように自由診療比率が高い診療科は、利益性が高くても専門性の違いによって引き継ぎが難航するケースがあります。整形外科や人工透析のように設備依存度が高い診療科では、機器の状態や運営ノウハウが譲渡額や引き継ぎ後の運営に影響を与えます。
このように患者層や診療スタイル、設備、属人性といった複数の要素が診療科ごとに異なるため、一律の承継プランは成り立たないのが実情です。
一見難しい科でも方法はある
属人性の高い診療科や自由診療が主体の診療科でも、承継の成功事例は数多くあります。
たとえば、地域からの信頼を軸に診療を行なっていた内科クリニックでは、後継者との事前面談を重ね、理念や患者対応スタイルの共有に力を入れることで、スムーズな承継を実現しました。また、ある歯科医院では自由診療メニューのマニュアル化や経営指標の開示により、引き継ぎ後の安定経営につなげたケースもあります。
難しいとされる診療科でも、「何を残し、どう伝えるか」を工夫することで乗り越えられる可能性は十分にあります。
自分の科にあった準備が大事
大切なのは、他の診療科と比べて悲観することではなく、自分の診療科の特徴を客観的に捉えた上で承継準備を進めることです。
「患者が自分についているから無理かも」「うちは自由診療メインだから難しい」といった悩みは、事前の情報の可視化や共有、引き継ぎ方法の工夫でカバーできることも多いのです。診療科の特性を知り、その特性に合った準備を進めるだけでも承継の選択肢は広がります。
医院の評価軸は「診療科
×地域×体制」で変わる
診療科による特徴:
どこが評価されやすいか
診療科によってクリニックの評価は大きく変わります。たとえば、歯科や美容皮膚科など自由診療の比率が高い診療科は利益率が高く、継続性のあるビジネスモデルと見なされる傾向があります。一方で、内科や整形外科のような地域密着型の診療科は、患者基盤の厚さや地域とのつながりが評価の対象になります。
何を評価軸に置くかは買い手の目的によっても変わるため、自院の診療科の特性をしっかり把握しておくことが大切です。
地域特性との掛け算
同じ診療科でも、都市部と地方では評価が変わります。都市部では競合が多く、設備やサービス面での差別化が求められますが、アクセスの良さは大きな強みです。一方、地方や医療過疎地域では、安定した患者数や地域医療構想との整合性が重視される傾向にあります。
たとえば、内科が不足している地域では高いニーズが見込めることで後継者も見つかりやすく、スムーズな承継が実現するケースもあります。診療科だけではなく、「どこで診療しているか」も価値に直結するということです。
体制面のポイント
買い手は診療面だけではなく、「クリニックをどう運営しているか」も見ています。スタッフの定着率や業務の分担状況、患者情報の管理体制、夜間対応の有無などは、運営面の安定性が評価される要素です。特に属人性が高いクリニックの場合、業務マニュアルの整備や電子カルテの共有状況などが重要になります。
運営体制がしっかりしていれば、買い手が引き継いだ後もスムーズに診療を継続できると判断され、評価のプラス材料になります。
「弱み」が「強み」に変わるケースも
一見マイナスに見える要素も、視点を変えると強みに転じることがあります。たとえば、設備の老朽化が目立つクリニックでも、固定費が低く利益率が高ければ十分に評価されます。「院長のファンが多く属人性が高い」というクリニックでも、丁寧な引き継ぎ計画があれば、むしろ地域密着型の強みとして認識されるかもしれません。大切なのは、自院の状況を正確に整理し、買い手のニーズとどうマッチするかを伝える準備をしておくことです。
各診療科における
典型的な課題と対処の方向性
内科
- 課題:院長に患者が強くついている/地域医療の中核としての役割。
- 対処の方向性:引継ぎ期間を長めに設定する/地域連携先に承継を知らせる/理念を共有する。
内科クリニックは、院長に対する患者からの信頼や、地域包括支援センターやケアマネージャーとの関係が強みになっている場合も多く、その属人性の高さが承継リスクになり得ます。
後継者に対する診療理念の共有だけではなく、連携先への丁寧な説明なども対処策として挙げられます。長めの引き継ぎ期間を確保し、後継者と関係者の顔合わせの場を設けることも効果的です。
消化器内科
- 課題:内視鏡装置などの高額設備の維持管理コスト、患者の長期的信頼関係とスタッフの専門スキルの承継。
- 対処の方向性:設備の稼働実績とメンテナンス履歴の提示/診療方針の言語化とマニュアル化/スタッフとの相互理解を深める場を設ける。
消化器内科クリニックの医業承継では、内視鏡装置などの設備と、患者との長期的信頼関係が医院の価値を構成します。
承継を成功させるには、設備の稼働状況やメンテナンス履歴を整理し、診療方針や患者説明を言語化することが重要。スタッフの専門スキルや患者との関係性を見える化し、後継者に引き継ぐことが成功の鍵となります。
小児科
- 課題:親子2代・3代の信頼関係、子育て相談スタイルの属人性。
- 対処の方向性:育児支援方針の共有/スタッフの関係性を活かす/地域行事・学校連携の情報引継ぎ。
小児科クリニックは、患者本人よりも保護者との信頼関係が継続通院のカギになり、特に育児相談や予防接種などに対する姿勢は院長の個性が強く出る部分でもあります。
承継に際しては、診療方針や説明スタイルを可視化し、親子への対応をスタッフもサポートできる体制を整えることが重要です。また、地域行事や学校連携といった外部活動についても、引き継ぎ時に情報として整理しておくとスムーズに進みます。
整形外科
- 課題:リハビリ機器の維持管理コスト、理学療法士などのスタッフ依存。
- 対処の方向性:機器状態の評価と譲渡条件/スタッフの雇用維持/外来数の安定データを用意する。
整形外科クリニックは、リハビリ機器の維持管理や、理学療法士・作業療法士など専門スタッフの存在が運営の基盤になっているケースが多く見られます。
承継に向けては機器の状態やリース契約・保守情報を整理し、スタッフとの関係性や雇用条件も明確化しておく必要があります。特にスタッフとの信頼関係が強い場合は、最終譲渡成立後速やかに後継者とのコミュニケーションの機会を設けると安心感が高まります。
訪問診療
- 課題:患者契約の切替、オンコール負担、スタッフの負荷。
- 対処の方向性:契約書や運営フローをマニュアル化/後継者の働き方改革に合わせる形を作る。
訪問診療クリニックでは、患者との契約だけではなく、家族や入所先施設、多職種連携の関係性が信頼の基盤になっています。また、オンコール体制の負担の状況も後継者にとって重要な判断材料です。
そのため、外部連携フローの整理、スタッフや非常勤医師との連携体制の見える化、オンコール体制の分担方法の明確化などが承継成功のポイントになります。
歯科:自由診療比率や設備依存
- 課題:保険診療と自由診療のバランス、設備更新コスト、患者の属人性。
- 対処の方向性:自由診療ノウハウのマニュアル化/高額機器の状態整理と評価/院長スキルの共有。
歯科クリニックは保険診療と自由診療の構成バランスに加え、医療機器の状態も課題になりやすい傾向があります。
承継の際には自由診療メニューや説明フローをマニュアル化し、設備については稼働状況や保守契約、耐用年数などの情報を整理しておくことが買い手の安心材料になります。また、院長のスキルに依存する診療内容を、可能な限り共有できるように言語化しておくことも有効です。
医業承継は診療科によって特徴や課題が大きく異なりますが、自院の特性を正確に把握し、適切な準備と工夫を重ねることで、難易度の高い科でも円滑な承継が可能です。
設備の状態や診療方針、スタッフ体制などを見える化し、買い手の視点を意識して伝えることが成功の鍵となります。承継は一律の方法ではなく、「診療科×地域×体制」に合った戦略が求められます。
SAコーポレーション
12年クリニック運営を経験し、その後M&Aを行った宮﨑医師が、自分自身の経験をもとに、「医師が満足できる、幸せになれる医業承継を実現したい」とSAコーポレーションを設立。
十分な準備期間を経て、クリニックの価値を上げたうえで行うM&Aを提唱し、その情報発信やサポートを行っています。
