承継の準備とイグジット経営
当サイトは株式会社SAコーポレーションをスポンサーとしてZenken株式会社が運営しています。
この記事でわかること
- 医業承継における「準備」の重要性と失敗の原因
- イグジット経営の考え方と医療機関における効果
- 医業承継を3年間で準備するための具体的ステップ
- 承継に必要な「診療」「人事」「理念」の整備ポイント
M&Aは“決断”ではなく
“準備”の勝負
成功する医院は“何年も前”から準備している
医業M&Aにおいて重要なのは、「売るという決断」ではなく、それまでにどんな準備をしてきたかという点です。多くの成功例に共通しているのは、院長が引退を意識する前から将来を見据えた取り組みを始めていること。
特に収益の安定化やスタッフの定着、患者や地域社会との信頼関係の構築など、後継者がスムーズにバトンを受け取れる土台を整える努力がなされています。
「患者のためにずっと医院を残したい」「スタッフの雇用を守りたい」という視点を持ち、5年先、10年先から逆算した計画を実行することが、医業M&Aの成功につながるのです。
準備不足で損をするパターン
一方、準備不足のまま引退や売却を考えるとさまざまな問題が発生します。買い手がなかなか見つからない、見つかっても希望条件が通らない、交渉の途中でスタッフが離職してしまう、患者が別の医院に流れてしまう、といった事例も少なくありません。
こうした失敗例に共通するのは、M&Aを「そのまま経営を他人に渡せばいい」と解釈するにとどまり、医院を承継する上での「見せ方」や「引き継ぎ方」に配慮が欠けていることです。事業の継続性や地域での信頼を維持するには、経営側の綿密な準備も必須です。
地域医療を残せるかは準備次第
単に医院を閉じるのではなく、地域社会に継続して医療を提供するための出口戦略を選ぶこと、これが医業M&Aの大きな意味です。後継者にきちんとバトンを渡すには、経営の見える化やスタッフ・患者への丁寧な説明、地域との関係性の継承など、段階を踏んだ準備が欠かせません。
特に地域密着型の医院においては、「辞める」ではなく「つなぐ」ための計画性が、地域医療を未来へ残すためのカギになるのです。
イグジット経営とは?
目的と効果
そもそも“イグジット経営”とは
“イグジット経営”とは、将来の事業承継やM&Aを視野に入れた「逆算型の経営スタイル」を指します。医院の場合は、院長が現役のうちから「どのように引き継ぐか」「誰に任せるか」「患者やスタッフをどう守るか」といった視点で経営計画を立てておくことが重要です。
医院の売却が主な目的ではなく、「誰かにバトンを渡せる状態に整えておく」ことこそが、イグジット経営の本質です。時間をかけて土台を整えていけば、結果として希望に近い承継が実現しやすくなります。
なぜ医業に必要なのか
地域社会に密着し、患者一人ひとりとの長期的な信頼関係によって存在し続ける、それが医療機関のあるべき姿です。そのため、突然の廃業や無計画な承継は患者の不安や混乱を招き、地域社会に悪影響を及ぼす可能性があります。
イグジット経営はこうしたリスクを回避しつつ、院長が大切に守ってきた理念や地域医療のバトンを確実に後継者に渡すための手段です。もちろん、医院の事業価値を高めておけば引退後の生活の安心にもつながります。
廃業との違い
イグジット経営に成功する医院と、そのまま廃業してしまう医院の大きな違いは、「準備があるかどうか」に尽きます。
廃業は経営に区切りをつける手段のひとつには違いありませんが、患者やスタッフ、そして地域社会に対する配慮がなければ多くの“損失”を生む可能性があります。特に地域における医療インフラの断絶は、患者にとって大きな痛手です。
それに対して、イグジット経営は地域医療を継続させるための選択肢を用意し、関係者すべてにとって納得のいく「出口」をつくる考え方です。そして事前の準備がその成果を大きく左右します。
3年でできる承継準備の
ステップ
1~2年目:現状把握と弱点の見える化
承継準備は、自院の“今の状態”を正確に把握することから始まります。保険収入や経費、診療単価といった経営データの整理に加え、どのような患者層が通院しているのか、年齢構成や受診頻度などの分析も重要です。
また、医療機器の耐用年数や保守状況、スタッフの人数や経験値、雇用形態なども棚卸しを行ない、クリニックの強みと弱点を可視化しておくことが後々の経営改善や交渉にも役立ちます。特に属人性の高い医院ほど、この段階での丁寧な把握が承継の成功に直結します。
1~2年目:改善計画と候補探し
2年目からは、見えてきた課題に対する改善策を講じていきます。たとえば、業務フローの見直しやスタッフ教育を通じて、院長の指示がなくても機能する体制づくりを進める、といったことです。
また、医療法人化の検討や資産管理など、事業価値を高めるための経営施策もこのタイミングで取り組むといいでしょう。同時に、M&A仲介会社やコンサルタントなど外部の専門家との連携を始め、信頼できる候補者との接点をつくる準備にも入っていきます。
3年目:引き継ぎ計画と実行準備
3年目には、実際の承継に向けた具体的なステップに移行します。まずは、後継者候補との条件交渉を進め、双方が納得できる合意形成を図ります。
その上で、スタッフや患者に対して丁寧な告知・説明を行ない、不安を最小限に抑える配慮も必要です。診療の引き継ぎに伴う契約実務や行政の手続きも発生するため、専門家のサポートを受けながらスケジュール管理を徹底しましょう。段階的な実行が、スムーズな承継と地域医療の継続につながります。
診療・人事・理念…
整理すべき3つの軸
1.診療:属人性をどう残すか
医院の承継で難しいのが、院長の診療スタイルや患者との関係性といった「属人性」の承継です。それをゼロベースから伝えるのは現実的ではありません。
そこで重要になるのが、診療内容の「言語化」です。たとえば、患者台帳には症状だけではなく背景や関係性の記録を加える、問診の進め方や診療方針をマニュアルとして残すなど、後任が再現できるような形式でノウハウを整理しておけば、承継後の患者の不安も和らぐでしょう。
2.人事:スタッフの不安を減らす
承継時に起こりがちな混乱のひとつが、スタッフの動揺や離職です。その理由の多くは「この先どうなるのかわからない」という不安から来ています。事前に雇用条件を明文化し、賃金や勤務体制などの変更があれば早期の説明が求められます。
また、院長個人への依存度を下げるためにも業務の分業化を進め、誰が院長になっても組織として機能する体制を構築しておくことが重要です。何より、スタッフの安心感が円滑な承継のベースになると心得ておきましょう。
3.理念:後継者が引き継ぎやすい形に
地域密着型の医院ほど、単なる医療機関以上の存在意義を持っているものです。患者との信頼関係、地域医療への貢献、診療に込める思いなど、院長の理念は承継において見落とせない医院の“軸”です。その理念を後継者に伝えるには、「自分が何を大切にしてきたか」を文章や資料で見える形にしておくことが大切です。
理念が言語化されていれば、後継者がそれを理解し、必要に応じて自らの方針と融合させていくことができます。理念の承継こそが、地域に信頼される医院であり続けるための第一歩です。
M&Aで“売れる医院”と
“売れない医院”の違い
安定した収益とスタッフ体制、そして業務の「見える化」がM&Aで高く評価される医院の共通点です。
一方、院長への過度な依存や経営データの不備はマイナス要因。円滑な承継には、日々の経営改善や業務マニュアルの整備、労務管理の徹底が不可欠となります。
3年後のM&Aを見据えて
準備する
クリニックの承継には最低3年間の準備期間を設けるのが、より理想的です。
初年度は経営データの整理や業務の可視化、2年目は仕組みづくり、3年目に交渉開始と、計画的に進めることで、納得のいく条件での承継が実現しやすくなります。早めの準備が患者やスタッフの安心につながり、成功への鍵となります。
医業承継に必要な
財務・人事・理念の整備
承継成功のためには、財務、人事、理念の3つの柱を事前に整備すべきです。
売上や費用の透明化、雇用契約の明確化、診療方針の言語化を進めれば、買い手に安心感を与え、有利な条件での承継が期待できます。これら3つの「見える化」は、円滑な承継とスタッフ・患者の信頼維持に不可欠です。
医業承継は「決断」ではなく「準備」の質が成否を左右します。イグジット経営という視点で、早期から診療の属人性、人事体制、理念の言語化などを進めることで、スムーズかつ有利なM&Aが実現可能です。
3年計画で現状把握から改善・交渉準備を段階的に行えば、患者・スタッフ・地域への影響を最小限に抑えつつ、地域医療のバトンを次世代へつなげることができます。
SAコーポレーション
12年クリニック運営を経験し、その後M&Aを行った宮﨑医師が、自分自身の経験をもとに、「医師が満足できる、幸せになれる医業承継を実現したい」とSAコーポレーションを設立。
十分な準備期間を経て、クリニックの価値を上げたうえで行うM&Aを提唱し、その情報発信やサポートを行っています。
