医業承継・M&A入門
当サイトは株式会社SAコーポレーションをスポンサーとしてZenken株式会社が運営しています。
この記事でわかること
- 医業承継とは何か、その基本的な意味と背景
- なぜ今、早期に医業承継を考える必要があるのか
- 医業M&Aの一般的な流れと親族承継・第三者承継の違い
- M&Aが向いている医院・向いていない医院の特徴と改善方法
医業承継とは?
なぜ“今”考えるべきか
そもそも「医業承継」とは何か
医業承継とは、開業医が年齢や健康上の理由によって第一線を退く際に、経営してきた医院を次の担い手に引き継ぐことを指します。これは事業承継のひとつの形ですが、長年にわたる患者さんとの信頼関係や各診療科の専門性、何より地域医療という公共性を伴う点が、一般企業の事業承継とは大きく異なります。
従来は親族への承継が主流でしたが、近年は親族に医師がいない、もしくは継がせたくないといった理由から、勤務医や第三者への承継、いわゆるM&Aが選ばれるケースが増えています。
「まだ先でいい」は危険
全国の開業医(一般診療所)の医師の平均年齢は2022年時点で60歳を超えており(※)、高齢化と医師不足が深刻化しています。特に地方では若手医師の都市部への流出もあり、後継者の確保が困難という現実があります。
一方、医業承継には少なくとも2~5年の期間が必要とされ、その準備の有無が開業医の進退に大きく影響します。後継者探しや経営情報・診療情報の整理、行政との折衝、引き継ぎといったプロセスを考えると、突然の引退ではとても間に合いません。後手に回れば、廃業を選ばざるを得ないケースもあるのです。
早めに考えるほど選択肢が広がる理由
早めに承継の準備を始めておけば、後継者候補を探す時間的な余裕が生まれるほか、医院の経営改善や組織の整備など、譲り渡しに向けた準備も段階的に進められます。患者さんもスタッフも安心できますし、買い手からも高い評価を得られるでしょう。
そして「地域医療の空白を避ける」という社会的意義は何より大きいはずです。医師としてのキャリアをきれいに閉じるために、早期の検討開始が望まれます。
M&Aは
一部の医院の話ではない
医療業界でM&Aが増えている背景
近年、医療業界におけるM&Aはまったく珍しいものではなくなっています。その背景には後継者の不在や働き方改革による勤務医志向の高まり、そして医院の法人化やグループ経営の進展があります。かつては一部の大規模医療法人の話と捉えられていたM&Aは、今や中小規模の開業医でも現実的な選択肢として検討される時代です。
継ぎ手がいないまま閉院するのではなく、「信頼できる誰かに託す」という新たな承継の形が注目されているのです。
「うちには関係ない」と思われがちな
医院の落とし穴
「うちは小さな個人医院だから」「まだ現役だから」と考える先生方も多いかもしれません。しかし、前述のとおり全国の開業医の平均年齢は年々上昇しています。
特に地方では、後継者が見つからずに閉院せざるを得ないケースが後を絶ちません。たとえ都市部でも、人口減少や競争激化によって経営が難しくなっているケースもあります。
「自分には関係ない」と構えている医院にこそ、実はM&Aという選択肢を真剣に考えるべきタイミングが迫っているかもしれません。
医院を閉じるとどうなるのか
閉院・廃業は最後の選択肢ですが、実際にはさまざまなコストや社会的影響が伴います。まず、医療機器や不動産などの資産処分には複雑な手続きと費用が発生するほか、スタッフの再就職も保証できません。患者は安心できる通院先を失い、地域医療の空白地帯を生む可能性もあります。
もしM&Aによって第三者にバトンを渡すことができれば、診療は継続され、地域医療の維持にも貢献できます。これは経営者としての選択であると同時に、医師としての使命に応える手段でもあるのです。
医業M&Aの基本的な仕組みと選択肢
(親族/第三者)
医業M&Aの流れを知ろう
(基本ステップ)
医業M&Aの一般的な流れは「現状分析」から始まり、次いで「仲介業者への相談」「譲渡候補者の選定」「条件交渉」「契約締結」「引き継ぎ・フォローアップ」という段階を踏みます。
最初に必要なのは、医院の財務状況や経営課題の把握です。その後、信頼できる仲介業者やコンサルタントと連携し、希望条件に合った買い手を探します。医療法人であれば、所轄行政との許認可調整も必要なため、慎重かつ丁寧な手続きが求められます。全体の期間としては、少なくとも2~3年程度を見込んでおくべきです。
親族承継と第三者承継の違い
親族承継は情緒的な安心感があり、経営理念の共有も期待できますが、そもそも親族に医師がいない、いても承継の意思がないということもあるでしょう。同族間での資産や相続の調整に悩むケースも少なくありません。
一方、第三者承継(M&A)は、相応のスキルや経営意識を持つ外部の医師や法人に引き継ぐ形で、比較的中立的な関係性で進められるのが特徴です。ただし、事前に「医院の魅力づくり」や情報開示の準備を進めておかなければ、買い手が見つかりにくくなる場合もあります。
どちらを選ぶ?迷ったときの判断基準
どんな形を選ぶべきか、それは家族構成や地域性、医院の規模や収益性、そして院長本人の価値観によって異なります。たとえば、長年にわたって地域に根ざしてきた医院であれば、医師会との関係性を活かして承継する選択肢もあるでしょう。一方、経営の立て直しが必要であれば、そのノウハウを持つ法人への譲渡を考えるべきです。
いずれにしても、時間に余裕を持って複数の選択肢を検討することが、後悔のない承継につながります。
医療機関のM&Aに
向いているケース・向いていないケース
M&Aが成功しやすい医院の特徴
M&Aが成立しやすい医院の共通点として、まず立地が良く患者数が安定している、スタッフの定着率が高い、診療体制や業務マニュアルが整備されている、といったポイントが挙げられます。
また、院長個人の人気やスキルに依存しすぎていない経営体制も評価されやすく、経営数値が明確で上積みが見込める場合も買い手にとって魅力的です。
すでに法人化されている医院や、在宅医療・介護との連携が進んでいる医院も高く評価される傾向にあります。
M&Aが難しいケースと注意点
一方、赤字経営が続いている医院や、専門性が非常に高い診療科の医院は、買い手が見つかりにくいと考えられます。また、スタッフの定着率の低さや施設・設備の老朽化、患者数の減少といった要因もマイナス評価につながります。
さらに、院長個人のスキルや人間関係に強く依存している医院では、院長の退任後に経営が成り立たないと判断されるケースもあります。
準備で変わる?
難しいケースを可能にする方法
M&Aに向かないとされる医院でも、計画的な改善によって承継可能な状態に変えることは可能です。たとえば、財務の整理や診療科の再編、スタッフ体制の安定化、院内オペレーションの標準化などを進めることで、買い手にとっての不安要素を軽減できるでしょう。
さらに、地域包括ケアシステムの一翼を担うとして、訪問診療など将来性のある分野に取り組む姿勢も評価材料になります。医療の質と経営の両面を見直すことで、医院の価値は確実に高まるはずです。
医業承継・M&Aの基礎知識
医業の第三者承継(M&A)の基本的な情報を各ページで詳しく解説しています。
医業M&Aとは?仕組みと基本ステップ
医業M&Aは、一般企業と異なり「地域医療の継続」など公共性が重視されます。親族承継が難しい中、第三者への承継が増加。急な廃業を避け、患者やスタッフを守るための有効な手段として、早めの計画が大切です。
M&Aで本当に地域医療は続くのか?
医業M&Aは、廃業を避け、地域における医療機関の診療機能とスタッフの雇用を守る前向きな選択肢です。買収は乗っ取りではなく、「つなぐ」行為。患者や地域への配慮、理念や信頼関係の引き継ぎが、地域医療を継続させる鍵となります。
医業M&Aと廃業、どちらが得か?
比較と判断軸
医業の廃業には、費用や煩雑な手続き、患者・スタッフへの影響といった大きな負担があります。一方M&Aは、譲渡対価を得つつ、医院やスタッフ、地域医療を守る有効な手段です。どちらも先生のゴール次第ですが、早めの専門家への相談が選択肢を広げ、後悔しない決断につながります。
クリニックの売却価格はどう決まる?
クリニックの売却価格は、利益や資産に加えて、スタッフの定着率や地域の評判といった「見えない価値」で決まります。年間利益の3〜5倍が目安(※)ですが、診療科目や立地も重要。収益構造を整理し、安定した組織体制を整えるなど、早期の計画的な準備が売却価格を上げる鍵となります。
M&A仲介業者はどう選ぶ?
信頼できる判断軸
医業M&Aの仲介会社は、医療特有の専門知識で買い手探しから契約までをサポート。報酬体系には成功報酬型と固定費型があります。安さだけでなく、医業専門の実績や守秘義務、担当者との相性が重要。トラブルを避け、円滑な承継を実現するため、複数の会社に相談し、実績と費用を比較検討しましょう。
M&Aの買い手には
どんな医療機関がいるのか?
医業M&Aの買い手は、エリア拡大目的の医療法人や開業希望の個人医師など様々。彼らは、医院の立地や診療科、安定したスタッフ体制を重視します。売却価格だけでなく、「理念やビジョン」を共有できる相手かを見極めることが、医院と地域医療の未来を守る上でとても重要です。
相談から承継完了までの平均期間と流れ
医業M&Aは、平均1年半~2年かかるのが一般的です(※)。行政手続きや候補探しで長期化しやすく、円滑な承継には丁寧な準備が不可欠です。引退時期から逆算し、財務改善やスタッフ・患者への配慮を含めて、最低でも3年前からの計画的な準備が成功のカギとなります。
医業承継は、開業医のリタイアに向けて医院を次世代に引き継ぐ重要な選択です。高齢化や後継者不足の中、早期から準備を進めることで、閉院を避け、地域医療を守る道が開けます。
親族承継が難しい今、M&Aは現実的な手段となっており、医院の価値を高める取り組み次第で可能性は大きく広がります。医師としての使命を果たすためにも、計画的な承継を検討すべき時代です。
SAコーポレーション
12年クリニック運営を経験し、その後M&Aを行った宮﨑医師が、自分自身の経験をもとに、「医師が満足できる、幸せになれる医業承継を実現したい」とSAコーポレーションを設立。
十分な準備期間を経て、クリニックの価値を上げたうえで行うM&Aを提唱し、その情報発信やサポートを行っています。
