精神科・心療内科
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この記事でわかること
- 精神科・心療内科クリニックにおける承継特有の課題と対応策
- 「信頼関係」や「治療継続性」を重視した引継ぎのポイント
- スタッフ・心理職の雇用継続が患者ケアに及ぼす影響
- 後継医師に求められる理念・方針の親和性と見極め方
精神科・心療内科では、医師と患者の信頼関係が治療の根幹を支える重要な要素です。他の診療科にも増して、承継時の配慮が特に重要です。
精神科・心療内科の承継・M&A動向
精神科・心療内科では、外来患者の増加と地域ごとの医師偏在が進んでいることを背景に、多くの地域において高い事業承継需要が見込まれています。
厚生労働省の医療施設動態調査によると、令和7年4月末時点の精神科病院は1,055施設です。長期的には緩やかな減少傾向にあります。
一方、令和4年医師・歯科医師・薬剤師統計によると、精神科医師が約1万6,800人、心療内科医師が約860人で、特に診療所勤務医の高齢化が顕著です。診療所の開業医においても高齢化の波が想定できるため、患者継続とスタッフ雇用の維持を図るうえで、第三者承継による運営継続が現実的な選択肢となりつつあります。
計画的な事業承継は、ビジネス面のみの課題解決だけではなく、地域医療の空白を防ぐための有効な選択肢となるでしょう。
出典 医療施設動態調査(令和7年4月末概数)│厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/iryosd/m25/is2504.html)
令和4(2022)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況│厚労省(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/22/index.html)
精神科・心療内科の承継の特殊性
精神科・心療内科の経営課題とM&A
精神科と心療内科は、精神保健指定医の有無や診療報酬の算定区分など、法的な取り扱いが異なります。承継時には、これらの違いが診療継続や届け出手続きに影響するため事前確認が欠かせません。
特に両科では、患者との信頼関係が治療の基盤であり、医師交代による不安を最小限に抑える工夫が求められます。現院長が一定期間診療を継続しながら丁寧に引き継ぎを行うことで、患者離れを防ぎやすくなります。
また、カウンセリングやリエゾンなどの精神科特有の診療報酬項目は、承継後も確実に算定できるよう体制整備が必要です。
精神科・心療内科の具体的な評価・算定方法
精神科・心療内科のM&Aでは、有形資産よりも「のれん代(営業権)」の比重が高く評価される傾向があります。これは、患者の通院継続率や紹介ネットワークといった「関係資産」が収益の安定性を左右するためです。
評価時には、集患力やレセプト単価、再診比率などを軸に診療の再現性を数値化します。設備面では、精神科特化型の電子カルテや予約・問診システム、心理検査機器の整備状況が重要な指標となります。オンライン診療対応やデータ連携体制といったIT基盤も、承継後の成長可能性を判断する上での評価要素に含まれます。
精神科・心療内科の承継を成功させる
3つのポイント
後継者と現院長の「診療方針の親和性」の確保
精神科・心療内科では、後継医師の治療方針が承継後の患者の信頼や通院継続を左右します。承継にあたっては、後継医師と現院長が診療理念や対応方針を事前に共有し、薬物療法やカウンセリングの比重など、治療スタンスの一貫性を保つことが重要です。
「心理カウンセラー」など専門スタッフの雇用継続
心理カウンセラーや臨床心理士などの専門スタッフは、心療内科・精神科の診療品質を支える中心的存在です。承継後に離職が生じると患者との信頼関係が揺らぐため、早期に雇用継続を明示することが求められます。
患者・従業員への丁寧な情報開示による不安の払拭
承継の過程では、患者とスタッフが将来への不安を抱きやすくなるため、院内掲示や面談を通じて、診療体制や担当医の変更点を丁寧に伝えて信頼維持に努めましょう。小さな変化も事前に共有し、少しでも不安の少ない環境づくりを目指します。
精神科・心療内科のM&A・承継の手順
譲渡価格決定/候補者探索
まず、クリニックの収益構造や患者数、スタッフ体制をもとに適正な譲渡価格を算定します。精神科・心療内科では、患者継続率や信頼関係といった「のれん価値」が評価額に大きく影響するため、理念や診療方針に共感できる候補者を探すことが円滑な承継には大切です。
基本合意
譲渡条件やスケジュールの方向性が固まった段階で、基本合意を締結します。この際、価格だけでなく診療方針や現院長の関与期間も明確にすることが重要。患者対応やスタッフ説明の方針も同時に確認します。
デューデリジェンス(DD)
買い手側が財務・法務・労務・医療体制などを精査する段階です。特に精神科・心療内科では、心理検査データやカルテ情報など個人情報の扱いに注意が必要となるため、患者の信頼を損なわない範囲で、開示内容と管理体制を丁寧に整理します。
最終契約
調査結果を踏まえて最終的な譲渡条件を確定し、正式な契約を締結します。契約書には診療継続期間やスタッフ雇用、引継ぎスケジュールを具体的に明記します。精神科・心療内科では、患者への告知や現院長の診療関与の方法も重要な項目となります。
クロージング
契約が締結されると、譲渡代金の支払いと同時に運営権が正式に移ります。その後、保健所や厚生労働局への届出、保険医療機関の変更など、必要な法的手続きを完了させる流れです。
承継後の一定期間は現院長が同席することで、患者やスタッフが戸惑うことなく移行できる体制が整えられます。
精神科・心療内科のM&A・承継の懸念事項と
対処法
従業員の雇用継続と処遇に関する法的注意点
精神科・心療内科の承継では、患者だけでなくスタッフの心理的安定を守ることが大切です。
個人事業の事業譲渡では雇用契約が自動的に引き継がれないため、譲渡先での再契約が必要です。一方、医療法人同士の承継では継続が比較的スムーズながら、就業条件や退職金制度、有給残日数の整合性確認は必要不可欠です。
いずれの場合も、スタッフ面談では待遇を明確にすることで、スタッフに不安を残さない対応で信頼維持につなげましょう。承継に伴い退職を申し出たスタッフには、法令に沿った適切な手続きを丁寧に進めることが重要です。
理想の後継者・買い手を見つけるポイント
精神科・心療内科の承継では、後継者の診療方針の親和性と人柄が特に重要。薬物療法とカウンセリングの比重、患者への接し方などが現院長と大きく異なると、通院継続率に影響するためです。
後継者との面談では、医療理念・対応方針・患者層への理解度を確認することに加え、継承後も一定期間の同席診療の機会を設けることが望ましいでしょう。地域に根ざして患者と信頼関係を築ける後継者が理想的です。
買い手側:承継開業後のスタートアップ戦略
新規開業に比べると、承継開業は既存の患者・スタッフ・設備をそのまま活用できる点が大きな強みです。特に心療内科では、既存の予約システムや心理検査体制が整っているため、集患の安定が見込めます。
一方で、保健所や厚労局への届出、保険医療機関の変更など、承継には特有の行政手続きが必要です。事前に法的スケジュールを把握しつつ専門家のサポートを得ることで、スムーズなスタートアップが実現するでしょう。
M&A・承継の信頼できる専門家の選び方
M&A仲介会社
M&A仲介会社は、売り手と買い手をつないで条件交渉や契約締結をサポートする専門機関です。精神科・心療内科の承継では、医療特有の契約形態や診療継続への配慮に精通しているかどうかが業者選びのポイントになります。報酬体系が明確で、かつ売り手の利益を優先する「片手型」仲介を選ぶと、透明性の高い取引を進められるでしょう。
弁護士
弁護士は、譲渡契約書の作成や法的リスクの確認など、取引の法務の面から担う専門家です。精神科・心療内科はもとより医療機関の承継では、個人情報保護や労務契約、診療引継ぎに関する法的配慮が不可欠。医療M&Aにおいて豊富な支援実績のある弁護士を厳選するようにしましょう。
税理士
税理士は、譲渡益の税務処理や、法人・個人に応じた最適な承継スキームを設計する専門家です。承継では譲渡所得税・贈与税・相続税などが関係し、取引の形によって負担が変わるため、医療会計やM&Aに詳しい税理士を選んだ上で、節税対策と資産保全を両立したスムーズな承継へとつなげましょう。
クリニックの価値を守りながら
バトンを渡すために今できること
精神科・心療内科クリニックの承継では、患者との信頼関係やスタッフ体制など、他の診療科以上に繊細な調整が求められます。事前に「財務」「法務」「人事」の3つの観点で現状を整理して課題を明確にしておくことが、スムーズな引継ぎの第一歩。理念を共有できる後継者の選定や診療方針のすり合わせも、承継を成功へ導く大切な要素となります。契約内容・雇用条件・税務処理を専門家と確認し、トラブルを未然に防ぐことも重要です。
クリニックの価値を守りながら次世代へとつなぐためにも、まずは専門家の無料相談を活用し、自院に適した証券プランを検討しましょう。
SAコーポレーション
12年クリニック運営を経験し、その後M&Aを行った宮﨑医師が、自分自身の経験をもとに、「医師が満足できる、幸せになれる医業承継を実現したい」とSAコーポレーションを設立。
十分な準備期間を経て、クリニックの価値を上げたうえで行うM&Aを提唱し、その情報発信やサポートを行っています。



SAコーポレーション
精神科・心療内科の承継において誤解されがちなのは、「M&A=悪いこと」というイメージです。しかし実際に問題となるのは、医師の知識不足につけ込み、不利な条件で話を進める業者の存在です。多くの医師は日々の診療に追われ、法務や財務の専門知識を学ぶ時間がありません。その隙を突かれ、理念を託したい相手ではなく、条件重視の買い手に譲渡してしまうケースがあることが問題です。
大切なのは、単に「売る準備」ではなく、「託す準備」を進めることです。診療・組織・財務を時間をかけて整え、理念を共有できる相手へと引き継ぐためのプロセスこそが、私たちが提唱する「イグジット経営」です。
3年をかけてクリニックの価値を高め、真に望む形で承継を実現する。それが、後悔のない医業承継への第一歩です。