循環器内科
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この記事でわかること
- 循環器内科ならではの承継課題(急変対応・病診連携・検査設備)
- 長期通院患者が離れない診療方針の引き継ぎ方
- 心エコーやホルター心電図など高額機器の適正評価と更新タイミング
- 承継後の現場を混乱させない共同診療期間の設計とコミュニケーション戦略
循環器内科の承継・M&A動向
厚生労働省の医療施設調査を見ると、循環器内科を診療科目に持つクリニックは2020年の12,807施設から2023年には12,585施設へとわずかに減少しています。一方で医師全体の数は増えていて、届出医師数は2020年の約34万人から2022年には約34.3万人に、実際に医療機関で働く医師も約32.4万人から約32.7万人へと伸びています。
ただし年齢構成を見ると様相が変わります。30〜39歳の働き盛り世代が約6.7万人いる一方で、60代が約5.9万人、70歳以上も約3.6万人と、ベテラン層の割合が決して小さくありません。
循環器内科には他の診療科にはない難しさがあります。患者の急変に備えた夜間対応、心エコーやホルター心電図などの高額機器のメンテナンス、大病院との連携ネットワークなど、どれか一つでも崩れると、患者は離れていきます。
院長が高齢になり後継者も見つからない状況が多く見られる中、地域医療を守るため、廃業ではなく承継やM&Aを選択する循環器内科医が増えています。
出典:
令和4(2022)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況│厚労省(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/22/index.html)
令和5年医療施設(静態・動態)調査(静態)結果の概況│厚労省(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/iryosd/m23/is2302.html)
循環器内科の承継の特殊性
急変対応の体制が評価を左右する
心筋梗塞や心不全の急性増悪など、循環器内科では、患者の急変も少なくありません。夜間の連絡体制、近隣の大病院へのスムーズな搬送ルート、緊急時のスタッフの対応態勢など、買い手はこのような急変への備えを細かくチェックします。態勢が整っていないクリニックは、承継後のリスクとして敬遠される可能性があります。
患者が通い続けてくれるかが収益の鍵
循環器内科の主な収益を支えているのは、高血圧や脂質異常症などで定期的に通院する患者です。定期通院の患者は、院長が変わった途端「前の先生と違う」と感じた患者が離れてしまうケースは少なくありません。
承継にあたっては、急に診療方針を変えないことを前提にしつつ、患者が安心して通い続けられる工夫(引き継ぎ期間中の共同診療など)が必要です。
医療機器の更新時期が価格交渉に影響する
心エコー、ホルター心電図、運動負荷試験機など、循環器内科には高額な専門機器が必要です。承継において、これら高額機器の次の更新時期は重要な評価項目です。機器が古く、承継後すぐに数百万円の買い替えが必要なら、その分を譲渡価格から差し引く交渉が必須になるでしょう。保守契約の状況やリース残債、故障リスクを事前に整理し、正しく承継者へ伝えることが大切です。
循環器内科の承継を成功させる3つのポイント
専門機器を「いつでも使える状態」に整える
心エコーやホルター心電図は、循環器内科の収益を支える重要な資産です。ところが、保守点検の記録が曖昧だったり、操作できるスタッフが限られていたりすると、買い手は不安を感じます。
点検履歴をファイルにまとめ、検査の手順書を用意し、誰が見ても運用できる状態にしておきましょう。さらに、更新が必要になる時期まで示せれば買い手は投資計画を立てやすくなり、価格交渉もスムーズに進みます。
病診連携を「院長の人脈」から「仕組み」へ
急変時の搬送先、紹介患者の受け入れ条件、緊急連絡のフローなどが院長個人の関係だけで回っていると、承継後に連携が途切れるリスクがあります。
紹介ルールを文書化し、承継医が病院の担当医と顔を合わせる機会を設ける、前院長が同行して挨拶する、合同カンファレンスに参加するなどの形で、「個人の信頼」を「組織の連携」へ切り替えることが重要です。
患者が安心して通い続けられる移行期間をつくる
長年通っている患者にとって、院長が変わることは大きな不安です。診療方針が急に変わったり、いきなり新しい医師が一人で診察を始めたりすると、「もう別の病院へ行こう」と考える患者が出てきます。
前院長と承継医が一緒に診察する期間を設け、患者に丁寧に説明すること、受付や看護師も統一した案内をすることなどの配慮が、患者の離脱を防ぎ、収益の継続につながります。
小見出し:後悔の少ない医業承継は、「準備」で決まる
M&Aを考え始めたとき、多くの医師が「地域医療を守れるだろうか」「信頼できる相手に任せられるだろうか」などの不安を抱きます。ところが、その不安を抱えたまま話を進めた結果、買い手のペースで交渉が進み、気づけば希望と違う条件で契約してしまい、後悔するケースも少なくありません。
医師は医療のプロですが、法律や金融の交渉は専門外なので、交渉の場で主導権を握れず、不利な条件を飲まされるケースもあります。
大切なのは、売り手の味方として動いてくれる専門家を早い段階で確保すること。そして、買い手を探す前に「診療体制」「組織運営」「収支の透明性」を整え、自信を持って引き継げる状態にしておくことです。
3年かけて準備を進める「イグジット経営」という考え方があります。時間を味方につけ、戦略的に準備することで、自分の意思を継いでくれる承継先に出会える可能性が高まります。
イグジット経営に関する詳細は、以下のサイトをご覧ください。
循環器内科の適正評価の算出方法
基本は「純資産+営業権」で考える
承継価格の算定は、まず「純資産(資産から負債を引いた正味の財産)」を出し、そこに「営業権(のれん)」を加えることが基本です。
正確な純資産の把握には、帳簿上の、未収入金や在庫、借入金だけでなく、退職金の見込み額やリース残債、将来の修繕費用なども織り込む必要があります。土地や建物、医療機器は時価に修正することもあります。
営業権については、過去数年の平均利益に一定の倍率(たとえば2〜3年分)をかけて算出する方法が一般的です。複数のパターンで試算し、買い手と交渉しながら落としどころを探っていきます。
営業権の評価は「患者の継続性」と「連携の質」で決まる
循環器内科の営業権を高く評価してもらうためには、安定して通院している患者数が重要です。高血圧や脂質異常症などの生活習慣病の患者が中心なのか、心不全や不整脈のフォローが多いのかなど、患者層によって収益の安定性が変わります。再診の予約状況や、月毎の検査件数の実績も評価材料です。
また、大病院との紹介・逆紹介の仕組みがしっかりつくられていること、スタッフが定着していること、院長一人に依存せず組織として機能していることなどの要素も、将来の収益の確実性を左右するため営業権の評価に影響します。在宅医療や介護との連携があれば、プラス評価につながることもあります。
専門機器は「帳簿上の価値」ではなく「実際に使える価値」で見る
心エコーやホルター心電図などの専門機器の評価額は、帳簿に残っている金額(簿価)だけで判断するのは危険です。実際の稼働状況、故障の履歴、保守契約、定期的な校正や点検の実施状況など々、現状の運用状態が本当の価値を決めます。
検査データの保存形式や移行方法、付属品の有無、リース契約の条件、移設にかかる費用や設置環境なども確認が必要です。メーカーの保守サポートが終了間近の機器は、承継後すぐに買い替えが必要になるので、その費用負担も価格交渉の焦点になります。
循環器内科のM&A・承継の手順
譲渡価格決定/候補者探索
まず純資産と営業権の目安を試算し、機器の更新費用や病診連携の状況も考慮して、譲渡条件の骨格をつくります。循環器内科は専門性が高いので、候補者探索においては診療方針や救急対応の考え方が合う相手を見つけることが非常に重要です。
基本合意
価格の大枠、スケジュール、独占交渉権、守秘義務などを文書にまとめます。循環器内科では、承継後も患者が安心して通い続けられることが重要なので、前院長と承継医が一緒に診療する期間の設定や、連携病院へ同行しての挨拶などの移行計画も、この段階で合意しておきます。
デューデリジェンス(DD)
買い手が本格的に医院の調査を行う段階です。財務や税務に加え、医療機器の稼働状況、検査の運用フロー、スタッフの体制、病診連携の実態まで詳しく確認されます。救急対応の手順や紹介ルートが院長個人に依存していないことなども重要なチェックポイントです。
最終契約
譲渡する資産や契約、スタッフの処遇、表明保証の範囲、競業避止義務、引き継ぎ支援の内容などを最終確定します。医療機器の不具合やリース契約の引き継ぎ条件、連携に必要な運用ルールを明確にしておくことで、承継後のトラブルを防止できます。
クロージング
代金の支払いと同時に、名義変更、契約の切り替え、スタッフへの説明、患者への案内を進めます。循環器内科では通院の継続が収益の生命線なので、診療体制の変更は段階的に伝え、院内外の連携を早期に安定させることが成功の鍵です。
循環器内科のM&A・承継の懸念事項と対処法
診療継続性の確保
長年通っている患者にとって、院長が変わることは大きな心配事です。患者との信頼関係をスムーズに引き継ぐためには、前院長と承継医が一緒に診療する期間を設けることが効果的です。
また、急変時の対応手順や一般内科としての診療実績、連携している病院とのルートなども、口頭ではなく文書にまとめて引き継げば承継後の混乱を抑えることができます。
高度専門機器の資産評価とリスクヘッジ
心エコーや負荷心電図などの専門機器は、循環器内科の収益を支える重要な資産です。しかし、それらの機器が古くなっていた場合、承継後すぐに数百万円の更新費用が必要になることもあるので、事前に機器の状態と更新時期を明確にし、その費用を譲渡価格に反映させるか、買い手が負担するかを契約で決めておくことが重要です。
リース契約がある場合は、残債や契約条件を細かく確認しましょう。採算が取れていない検査機器があれば、撤去も含めて投資計画を立て直す必要があります。
属人性の高い経営からの脱却
地域の診療所は、どうしても院長個人に依存しがちです。「この先生だから安心」という信頼が強い分、承継後の診療に患者は不安を感じることもあります。
この不安に対する対処法としては、診療の流れやスタッフの役割分担、病院への紹介対応などを「仕組み」として整理し、院長不在でもスタッフが主体的に動ける状態をつくることが大事です。
M&A・承継の信頼できる専門家の選び方
M&A仲介会社
買い手候補を探し、価格や条件を調整し、全体の進行を管理する役割を担います。業者選びにおいて確認すべきは、医療案件の実績、守秘義務の徹底度、手数料の透明性です。
また、循環器内科では医療機器の評価や病診連携の引き継ぎが論点になりやすいので、デューデリジェンスの設計まで伴走できる会社を選ぶことが重要です。売り手の意向を尊重してくれること、買い手寄りの進行にならないことも、初回の面談で見極めましょう。
弁護士
基本合意書や最終契約書の作成、表明保証や競業避止の条項設計、スタッフ引き継ぎに関する法的リスクの整理などを担当します。医療M&Aの経験がある弁護士を選び、診療の継続性や患者対応を契約条文に落とし込む際のポイントを整理してもらいましょう。
仲介会社から独立した立場で、売り手の味方として交渉できる体制であることもチェックしてください。費用と支援範囲も事前に確認しておきましょう。
税理士
譲渡の税務スキーム設計、資産・負債の実態把握、決算書の整備などを担います。純資産や営業権の算定根拠、役員報酬や退職金の扱いも重要な対応分野です。
医療機関の顧問経験がある税理士なら、保険診療の入金サイクルや設備投資の特性を踏まえた助言が期待できます。承継の数年前から相談できる関係を築いておけば、スムーズに準備を進めることができます。
循環器内科の医業承継は「準備」と「引き継ぎ設計」で差が出る
循環器内科の承継では、専門機器の運用と更新計画、急変時の対応体制、病診連携、そして長期通院している患者が離れない体制をセットで引き継ぐ必要があります。どれか一つでも欠けると、承継後に患者が離れたり、連携が途切れたりするリスクが高まるので注意しましょう。
では、このような体制はどう評価されるのでしょうか。価格は帳簿上の純資産だけで決まるわけではありません。安定して通院している患者の数、病院との連携の強さ、院長に頼らず回る仕組みの有無などの要素も「営業権」として評価され、譲渡価格に反映されます。
後悔しない承継にするには、前院長と承継医が一緒に診療する期間を設けたり、連携ルールを文書化したりといった移行設計を早めに始めることが大切です。自信を持って引き継げる状態を整えてから買い手を探しましょう。
判断に迷ったら、医療M&Aに詳しい仲介会社や弁護士、税理士に相談し、譲渡条件と手順を具体化していくことをおすすめします。
SAコーポレーション
12年クリニック運営を経験し、その後M&Aを行った宮﨑医師が、自分自身の経験をもとに、「医師が満足できる、幸せになれる医業承継を実現したい」とSAコーポレーションを設立。
十分な準備期間を経て、クリニックの価値を上げたうえで行うM&Aを提唱し、その情報発信やサポートを行っています。


