開業医の老後資金を考える
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この記事でわかること
- 開業医が直面する老後資金の課題(退職金・年金・医院資産の関係)
- 引退後の生活に必要な資金額の考え方と収入源の整理
- 医院を老後資金の柱として活かす方法(承継・売却・賃貸)
- 税制優遇制度(小規模企業共済・iDeCoなど)を使った備えのポイント
- 承継と閉院、それぞれの選択が資金面に与える影響と注意点
開業医特有の課題とは?
退職金も企業年金もない開業医の老後
サラリーマンや勤務医であれば、退職時に一定額の退職金や企業年金を受け取れるケースが多くあります。しかし開業医は個人事業主にあたるため、そうした制度とは無縁です。他の多くの業種以上に、現役時代から自分自身で老後の資金をつくっていく意識が求められます。
国民年金だけでは賄えない生活費の現実
開業医が加入する公的年金は国民年金のみ。仮に満額受給しても、月額約6万9,000円程度にとどまります。
老後に夫婦2人でゆとりある生活を送るには月額約39万円が必要との調査結果(公益財団法人生活法人文化センター「2025年度 生活保障に関する調査」)もあることから、年金収入だけで夫婦の生活費をまかなうことは、現実的ではありません
医院の資産状況が老後の資金計画を左右する
もし自院を売却する予定ならば、医院そのものが大きな資産となります。ただし、開業時の借入金や設備投資の残債がある場合は、引退後、手元に残る資金が想定より少なくなることもある点に注意が必要です。早めに医院の評価額と残債の状況を把握し、老後の資金計画へ組み込んでおくことが大切です。
医療法人化しているなら退職金設計に注意を
医療法人を設立している場合、役員退職金の設計や資産の個人への移転については、個人クリニックとは異なるルールが適用されます。退職金の支給額の根拠が不十分な場合、税務上のリスクにつながることもあるため、引退を意識し始めた段階で税理士などの専門家に相談しておくようにしましょう。
老後資金づくりの考え方
「いつ引退するか」より先に必要額を把握する
具体的な引退時期やその後のライフスタイルを検討する前に、まずは「生涯でいくら必要なのか」という総額を明確にすることが重要です。毎月の生活費や万が一の予備費をシミュレーションし、閉院後に入ってくる年金や資産運用、不動産収入などの見込み額と比較して、不足分を算出してみてください。老後の生活期間を25年と想定した場合、必要となる資金が1億円を超えるケースも決して珍しくはありません。
早い段階で自らの「現在地」を具体的な数字で把握しておくことこそが、計画的な準備に向けた確かな第一歩となります。
医院そのものを老後資金の柱として考える
クリニックは日々の診療の場であるだけでなく、引退後の暮らしを支える貴重な資産としての側面も持ち合わせています。たとえば医療モールへの売却や建物の賃貸活用、あるいは後継医師への事業承継など、クリニックの「出口戦略」を早めに設計しておけば、医院を引退後の大きな収入源へと変えることが可能です。
リタイアを単なる「終焉」と捉えるのではなく、これまで築き上げた医院を資産としてどう活かすかという視点を持つようにしましょう。
節税しながら積み立てる「退職金づくり」の発想
老後資金の準備において、税制優遇を受けられる制度を賢く取り入れることは非常に合理的な選択肢です。
たとえば、小規模企業共済は掛金の全額が所得控除の対象となるうえ、廃業時や引退時には共済金を受け取れるため、開業医には大変適した制度といえます。また小規模企業共済と併せて、同様に税制メリットがあるiDeCo(個人型確定拠出年金)を活用しても良いでしょう。
これらを「自ら退職金をつくる手段」として早期から活用すれば、将来への備えを着実に積み上げていくことができます。
医院承継か閉院か選択による資金面の違い
引退に際して「承継」と「閉院」のどちらを選択するかは、その後の老後資金計画を大きく左右します。それぞれの選択がもたらす資金的な特徴を正しく整理しておくことが、ゆとりある未来に向けた備えにつながります。
承継なら譲渡益が老後資金の柱になる。ただし、タイミングと相手選びが鍵
第三者への医院承継を選択した場合、事業譲渡によって得られる対価は、引退後の生活を支える非常に大きな資金の柱になる可能性があるでしょう。
ただし、実際の譲渡額は経営状態や設備の保守状況、そして交渉相手との条件次第で変動します。また、承継に向けた準備から最終的な引き渡しまでには、半年から1年以上の期間を要することも珍しくありません。「辞めたい」と思ってから動き出したのでは、好条件での譲渡を逃してしまうリスクもあります。
譲渡益を老後資金の柱として活用するためには、医院のコンディションが良い時期を見極め、早期に準備を開始することが重要です。
閉院の場合は一時的な支出への備えが必須
一方で閉院の道を選ぶ場合は、診療収入が途絶えるタイミングで、まとまった出費が重なりやすい点に注意しましょう。具体的には、医療機器や備品の処分費用、建物の原状回復費、長年貢献してくれたスタッフへの退職金の支払いなどです。
閉院に伴う一時的な支出は、あらかじめ想定しておかなければ手元のキャッシュフローを大きく圧迫しかねません。大切な老後資金を切り崩しすぎないためにも、閉院にかかる「出口コスト」を事前に試算しておくことが求められます。
承継・閉院のいずれを選択するにせよ、まず取り組むべきは自院の資産と負債の正確な棚卸し。不動産や設備、借入金、手元資金の状態を整理してキャッシュフローを可視化しておくことは、適切な選択肢を比較検討するうで不可欠です。
早い段階から、税理士やファイナンシャルプランナー、承継コンサルタントといった各分野の専門家の知見を借りつつ、後悔の少ない選択をしましょう
医院を畳むことは、地域医療の終わりを意味しません。承継という形を選択すれば、診療を次の世代へとつなぐことができるからです。
一方で、仮に承継したとしても、自身の老後資金の問題は別物です。一定の老後資金を準備しておくことは、引退後も健やかに、そして地域社会と良好な関係を保ち続けるための大切な土台になることを再認識し、まずはご自身の医院の経営状況と、理想とする生活の現状を数字で客観的に把握することから始めてみてください。
「地域への貢献と自分自身の人生、その両方を大切にする老後設計」は、早く動き出すほどに選択肢の幅が広がります。まずは現在の立ち位置を見つめ直したうえで、老後へ向けた備えの準備を進めましょう。
SAコーポレーション
12年クリニック運営を経験し、その後M&Aを行った宮﨑医師が、自分自身の経験をもとに、「医師が満足できる、幸せになれる医業承継を実現したい」とSAコーポレーションを設立。
十分な準備期間を経て、クリニックの価値を上げたうえで行うM&Aを提唱し、その情報発信やサポートを行っています。


