医師が採用できない理由とは
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この記事でわかること
- なぜ医師採用が他職種と比べて極めて困難なのか、その構造的な要因を徹底解剖します。
- 医療機関側が陥っている求人や面接の「致命的な間違い」を明確化します。
- 長期雇用と短期雇用を戦略的に使い分けるための具体的なアクションプランを提案します。
「長期雇用だけ」に頼る発想の限界
多くの医療機関が医師採用で苦戦する最大の背景には、「長期雇用だけ」に依存した旧態依然とした発想の限界があります。従来の「一生その院で働くこと」を大前提とした長期雇用のモデルだけでは、多様なライフステージやキャリア形成を重視する現代の医師のニーズに到底対応できません。期間限定で特定の専門スキルを磨きたい医師や、複数の病院を掛け持ちして柔軟に働きたい医師など、働き方は極めて多様化しています。このような変化を無視して「安定的な長期勤務」という一辺倒な条件だけを掲げている限り、優秀な医師とのマッチング機会を自ら放棄していることになります。
医師採用が難しい、業界全体の構造的問題
医師の採用が他職種と比べて格段に困難である背景には、日本の医療業界特有の複雑で根深い構造的な問題が存在しています。問題解決を実現するためには、現状の正確な把握・理解が欠かせません。
高度な専門知識と資格の必要性
医師の採用において最も高いハードルとなるのは、その専門性の極端な高さです。医学部で6年間学び、研修を経て国家資格を得た上で、さらに専門医や認定医といった資格を取得するには膨大な年数と研鑽が必要です。これほど高度な知識と技能を要する人材は物理的に数が限られており、売り手市場が常態化しています。特定の診療科目や特定の高度医療技術を持つ医師を探すとなると、対象者はさらに限定され、競争は熾烈を極めます。
労働環境の厳しさ
医師の仕事は、患者の命に直結する重責と、過酷な労働環境によって成り立っています。夜間当直や急患対応、長時間にわたる手術など、肉体的にも精神的にも負荷が非常に高く、ワークライフバランスの確保が容易ではありません。働き方改革が推進される中でも、医療現場の現場負担は依然として重く、採用においてはこの「過酷な労働環境」をどう改善し、医師が健やかに働ける環境を証明できるかが、選別されるための最大の壁となっています。
地域格差と都市部集中
医師の志向は都市部に大きく偏っており、地方では医師不足が慢性化しています。都市部には高度な医療設備や教育体制、生活利便性があるため、医師が集中する傾向があります。一方で、地方の医療機関はどれほど熱心に勧誘しても、医師の「生活基盤」や「教育環境」の面で二の足を踏まれることが少なくありません。この地域格差を埋めるには、単なる条件提示を超えた、地域医療ならではのやりがいや生活支援の提示が不可欠です。
医療機関側が抱える課題
採用できないと嘆く医療機関の多くは、外部要因だけでなく自院の「発信方法」や「定義の曖昧さ」に根本的な課題を抱えています。この根本課題を解決しない限り、採用に関する悩みがなくなることはないでしょう。
求める医師像の「定義の曖昧さ」
「いい先生が来ない」と嘆く前に、そもそも求めている「いい先生」の定義は明確でしょうか。専門科、経験年数、必須資格に加え、患者対応やチームワーク、高いコミュニケーション能力がどの程度必要か、細部まで言語化できていないケースが非常に多いです。特に、そのポジションは長期雇用を望むのか、短期雇用で即戦力を求めるのかという目的が混在していると、求人票や面接の訴求ポイントが完全にブレてしまいます。
発信力不足(求人情報の魅力的さ不足)
自院の魅力が外部に全く伝わっていない、あるいは発信すらされていないという点は致命的です。求人票には、業務内容や勤務実態が具体的に記されていますか? 理念や診療方針、医師が働きやすい工夫が明確に伝わる言葉で書かれているでしょうか。ただ給与や勤務地を並べただけの内容では、優秀な医師の目には留まりません。医師は「ここで働くことで自分自身のキャリアがどう磨かれるか」を非常に重視します。
面接でのアピール不足
面接を単なる「選考の場」と捉えていることも大きな間違いです。医師にとっての面接は、同時に「ここで働く価値があるか」を吟味する場でもあります。院長や幹部が自院のビジョンを熱く語れていますか? 医師のキャリア形成や専門医取得支援といった、具体的な支援策を提示できているでしょうか。ここで魅力をアピールできなければ、高い確率で離脱されます。面接は医師を惹きつけ、信頼を勝ち取るための最も重要なプレゼンテーションの場です。
人材マッチングの甘さ(医局・専門医制度・責任感の壁)
医師の転職には特有の事情があります。多くの医師は大学医局に所属しており、人事異動や研修の決定権が医局にあることが多く、個人の希望だけで転職先を決められない制約があります。また、専門医資格の維持・取得には特定の研修施設で症例数を稼ぐ必要があるため、転職先が厳格に限定されます。さらに、医師は「現職に迷惑をかけたくない」という強い責任感を持っており、医局からの引き留めも転職の大きな障壁となります。
働き方の魅力不足(労働条件・環境・評価)
現在の求人内容が、医師の期待に十分応えられていない可能性も高いです。給与水準だけでなく、当直の頻度、キャリアアップ支援の有無、スタッフルームや電子カルテといった設備面の充実度はどうでしょうか。特に、長期雇用か短期雇用かという選択肢がなく、柔軟な働き方が提供できないことは採用における大きな損失です。ライフステージが変化する医師にとって、固定的な働き方しか提示できない環境は、非常に選択しづらいものです。
すぐに取り組めるアクションについて
医師採用を成功させるには、現状の慣習を打破し、医師のキャリアに合わせた戦略的な採用体制を今すぐ構築する必要があります。まずはできるアクションから取り組むことが必要ですが、闇雲になるのではなくきちんと戦略的に取り組む必要があります。
求める医師像を明確にし、長期雇用・短期雇用の「使い分け」を定義
まずは「どのような医師を」「どの程度の期間で」求めているかを明確に定義しましょう。専門科や資格、人物像、勤務条件を具体化し、役割を分担させます。指導医や科長といった継続的な患者管理が必要な職種は「長期雇用」として手厚く処遇し、繁忙期対応や臨時、またはシニア医師の活用といった即戦力が必要な職種は「短期雇用」として明確に切り分けます。役割を混同せず、それぞれの枠に必要な条件を定義することで、求人ターゲットが絞られ、より精度の高い採用戦略を立案できるようになります。
長期雇用では「キャリア・定着」を、短期雇用では「柔軟性・即戦力」をアピール
雇用形態に応じて訴求ポイントを徹底的に使い分けます。長期雇用なら、理念や診療方針を伝え、研修制度や専門医取得支援を提示して安定的な定着を促します。一方、短期雇用では「柔軟な勤務時間・期間」を前面に出し、ライフステージに合わせた働き方をアピールします。繁忙期支援や複院勤務といった即戦力を求める形態であれば、報酬を適切に設定し、医師の時間を尊重する姿勢を見せることが重要です。雇用主としてのニーズと医師の要望を合致させることで、応募の門戸は確実に広がります。
長期・短期のメリットを丁寧に説明する
院長自らが自院のビジョンを具体的に説明し、医師との対話を重視してください。採用は「売り込み」ではなく「相互理解」のプロセスです。長期雇用の場合は、将来のキャリア形成がいかに充実しているかを説明し、短期雇用の場合は、その医師が短期間でいかに貢献でき、また自身の経験として何を得られるかを丁寧に伝えます。メリットとデメリットの両方を正直に説明することで、医師との間に信頼関係が生まれ、選ばれる理由が明確になります。
長期雇用・短期雇用を併用し、採用に頼らない組織を作る
長期雇用だけで全業務をカバーしようとするのは既に限界です。不足する人員を短期雇用で補い、組織の柔軟性を確保しましょう。短期雇用で出会った優秀な医師と良好な関係を築くことは、将来的に長期雇用へ誘導する強力な「パイプ役」になります。複数の雇用形態を併用することで、一時的な欠員にも迅速に対応でき、組織の安定性は高まります。採用難という環境に縛られず、短期雇用の可能性を戦略的に活用し、組織全体の強靭化を目指してください。
まとめ
医師採用が難しい理由は、医局制度や専門医制度、医師特有の責任感といった「医療業界特有の構造」と、それに対応できていない医療機関の「硬直的な採用戦略」の不一致にあります。採用成功の鍵は、これらの特殊事情を深く理解した上で、長期雇用と短期雇用の枠組みを適切に使い分け、それぞれのニーズに合わせた魅力を戦略的に発信することです。この記事で紹介したアクションを体系的に実施し、医師が「ここで働きたい」と心から思える魅力的な組織づくりに邁進してください。
SAコーポレーション
12年クリニック運営を経験し、その後M&Aを行った宮﨑医師が、自分自身の経験をもとに、「医師が満足できる、幸せになれる医業承継を実現したい」とSAコーポレーションを設立。
十分な準備期間を経て、クリニックの価値を上げたうえで行うM&Aを提唱し、その情報発信やサポートを行っています。


